2019年9月6日発売
1. Message from the Sun
2. Whirlwind
3. Cold
4. Storm the Armada
5. The Last of the Lambs
6. Who Failed the Most
7. You Won’t Fall (Exclusive Japanese Bonus Track)
8. Ismo’s Got Good Reactors (Instrumental)
9. Demon’s Cage
10. A Little Less Understanding
11. The Raven Still Flies
12. The Garden
Sonata ArcticaのTalviyöについて自由に語る
Sonata ArcticaのTalviyöが去年の9月に発売された。
かなり聴き込んだ現在、このアルバムについて思ったことを綴ろうと思う。
自分は彼らのかなりのファンであるので今回はパーソナルに自由に語ろうと思う。
タイトルはフィンランド語で冬の夜で、発音が他国の人には難しいということで半分冗談でつけたタイトルらしい。
彼らの大ファンである自分は最低でも20週以上はしただろう。
特にミュージックビデオになったColdはお気に入りで、現在の彼らの魅力が詰まった楽曲となっていると思っている。
デビューアルバムEclipticaが発売されてから20年という記念すべき年に発売されたSonata Arcticaの10枚目のスタジオアルバムがTalviyöだ。
端的にこのアルバムを表現すると、20年経ち成熟したソナタによる大人のロックアルバムだ。
ボーカルでバンドのソングライターのトニー・カッコは8thアルバムPariah’s Childから続く音楽性の延長線上にあるアルバムだとこの作品について語る。
Pariah’s Childでバンドは初期のパワーメタル路線と5thアルバムUnia~7thアルバムStones Grow Her Nameで追及した新たな音楽性の融合を達成した。
それは上手く機能していて、5th~7thで失われかけていたメタルな要素が帰ってきていた。
実験期は終わり、これがトニーが今後も続けていく音楽性なのだなと理解した。
その考えは正しかったようで、次に続く9thアルバムThe Ninth Hourでは音楽性に大きな変化はなかった。
強力なアルバムではなかったが、ソナタの歴史上名曲の部類に入るであろうCloser to an Animalとキャッチーでハートフルな良曲Lifeが入っていたことが嬉しかった。
それに続き2年11か月ぶりに発売されたTalviyöであるが、第一印象としては正直かなり地味なアルバムだと思った。
Pariah’s Childで一度メタル味を取り戻したソナタだったが、またメタル要素は薄くなりロックアルバムに近づいている。
今までのどのソナタのアルバムとも違うが、強いて言うなら7thアルバムStones Grow Her Nameが一番近いと思う。
しかしStones Grow Her Nameはシンプルなロックを標榜するようなアルバムだった。
だがこのアルバムはシンプルではない。
複雑なアンサンブルを使っているし、聴き手に風景を思い浮かべさせるような雰囲気作りがアルバム全体に仕込まれていて、音はかなり作り込まれている。
今回、アルバム全体としてのイメージを統一することに特に注力したようだ。
そのイメージとはアルバムタイトルとジャケットからも分かるように、冬の寒々とした夜の光景。
Whirlwindのイントロの吹雪を想起させるような音などは明らかだが、音作りそのものからジャケット写真のようなフィンランドの寒々とした風景がイメージ出来るのが素晴らしい。
ソナタには元々そのようなイメージがあったが、このアルバムではその雰囲気がより強調されていている。
このアルバムはトニーの言う通りPariah’s Child以降の路線の延長なのか?
確かにそう言われれば劇的な音楽的変化はないし、パワーメタルっぽい曲も入っていることは入っている。
個人的な意見としては、これは今までのどのソナタのアルバムとも違うと思う。
前作The Ninth Hourの時点で既にメタル色が薄くなっていたが、このアルバムではそれが更に進んでいる。
Message From The SunとインストのIsmo’s Got Good Reactorsは確かにパワーメタル要素を含んでいるが、全体としてはやはりこれはパワーメタルアルバムではないだろう。
メタルであるかさえ怪しい。
まぁロックアルバムであることは間違いないだろう。
これはフィンランドの孤高のバンドが作ったロックアルバムである。
よりロック感を感じさせるのは楽曲だけのせいではなく、新たに採用されたレコーディング方法とミックス担当が変わったことも影響している。
トニーはここ数作でより生々しいライブでのサウンドをアルバムに封入したかったらしいが、最終的な結果には毎回満足出来ないでいた。
そんなバンドは遂に最終的にバンドのライブエンジニアでもあるミッコ・タンゲルマンにミックスを依頼。
ミックスだけではなくレコーディング方法も変更し、ドラムとベースをライブ的に同時レコーディングしたらしい。
そして遂に今までのソナタのサウンドとは違う生々しいライブ感のあるエネルギーに満ちたサウンドを獲得することに成功したのだ。
人によっては音が少し悪いと感じるかもしれないが、今まで少し無機質な感じもあったので生々しい音の今作の音作りは個人的にはアリだ。
ファーストシングルはA Little Less Understandingだった。
最初この曲のリリックビデオを聴いた時、正直あまり感銘は受けなかった。
ドラム、ギター、ベースのコンビネーションが平坦だったのだ。
歌メロもそこそこキャッチーではあるが特別なものは感じなかった。
この曲はI Have a Rightの続編という立ち位置の曲らしく、歌詞のテーマも子供をどう育てるかということに関してということで共通している。
トニーがアルバムで最後に作曲したのがこの曲である。
最初トニーはこの曲は日本版のボーナストラックになるのではないかと思っていたが、良いファーストシングルになるとマネージャーに言われ実際にアルバムのファーストシングルになった。
これと同じようなことがI Have a Rightにも起きていたことは面白い偶然である。
(I Have a Rightもトニーが最後に曲を書き、日本版のボーナストラックになると思っていたが結局アルバムのファーストシングルになった)
確かにキャッチーな曲ではあるのでアルバムの先行シングルとしては良かったかもしれないが、アルバムにはもっと良い曲があるので他の曲でも良かったのではないかとも思う。
↑ A Little Less Understandingのリリックビデオ
個人的に感銘を受けたのはセカンドシングルのColdである。
この曲も最初は平坦であまりにも普通のロックすぎて刺激がないと思ったが、こちらは数回聴いたらすぐにハマってしまった。
一回しか出てこないキャッチーなメロディや展開の妙が面白い曲で、何度聴いても飽きない曲だ。
シンプルなようで複雑な部分もある懐の深い曲で、現在の所アルバムで一番お気に入りの曲である。
(ちなみにヘンカもこの曲がアルバムで一番のお気に入りらしい)
現在のソナタの志向を表明している曲とも言えるのではないだろうか。
↑ Coldのミュージックビデオ
アルバムには多様な曲が入っている。
Storm The Armadaは新しいタイプの曲で、繰り返されるユニゾンリフが印象的な楽曲だ。
トニーは最初この曲を先行シングルにしようと思っていたらしい。
確かにこの曲のほうが先行シングルとしてはインパクトがあったような気がする。
間奏のプログレ的な部分もソナタとしては新鮮で、パシのベースもバキバキで気持ちいい。
歌詞のテーマは環境破壊をテーマにしている。
セカンドアルバムSilenceのThe End of This Chapterから続くカレブサーガの続編も収録していることはファンを喜ばせる要素の一つだ。
The Last Of The Lambsという曲で、かなりソナタとしては異色のバラードだ。
終始ダークな雰囲気のキーボードが曲を支配し、メロディは綺麗ではあるが淡泊さもある。
Demon’s Cageは今作でも特にお気に入りのナンバーだ。
Unia以降顕著になったQueenからの影響を受けた曲の一つだと思われ、それにヘヴィなリフとツーバスが合わさり今作の中でもメタル色の強いナンバーとなっている。
耽美さとヘヴィさが共存するこういう曲が大好きである。
You Won’t Fallが日本版のボーナストラックとして入っていることは日本のファンには嬉しい所だ。
メロディが美しくシンプルな構成の曲で、ボーナストラックとしては惜しい程のクオリティを備えている。
そしてファンが物議を醸すことが容易く想像できるのが、アルバムのラストを飾るThe Gardenである。
ドラムの入ってないアコギを主体とした穏やかなバラードで、もうほとんどこれはポップスである。
しかし心温まる良い曲であることは確かで、メタルにこだわる人には厳しいかもしれないが万人受けする可能性を秘めている曲でもある。
最近の曲を聴けばトニーが明らかにメタルであることにこだわっていないことが分かるが、この曲を聴けば時にはロックであることにさえこだわっていないことが分かる。
この曲を受け入れられるか否かで、今のソナタに対する評価も変わってくるのではないか。
結局最終的にこのアルバムを最も支配していると感じるのがやはりトニー・カッコの歌唱である。
自分の表現力を最も活かせる音域で歌うことに集中していて、ハイトーンはアクセント程度というのが今の基本的な歌唱である。
彼の表現力は円熟の域に達していて、その儚さを内包したウェッティな歌声はこの叙情的な音楽にピッタリフィットしている。
結局ソナタの音楽はトニー・カッコの歌が本質である。
これまで様々に変化してきたソナタの音楽性だが、どの時代にもそこにはトニー・カッコの歌があった。
彼の歌が音楽をまとめ上げてきた。
そのソナタの本質が最も垣間見れるのがこのアルバムの本質ではないかと自分は思う。
自分が絶対にこのバンドについていくとハッキリと言えるのはトニー・カッコの歌が好きだからである。
歌声のことではなく、彼の曲自体が基本的に歌だと思っているということである。
どんなに音楽性が変わろうとも彼が作曲している以上彼の歌が主体ということは変わることはないだろう。
まとめ
話は逸れたがまとめると、このアルバムはソナタのカタログの中では特別強力なアルバムではないと思う。
個人的にはあまりに普遍的なロックに寄っていて、刺激が少ないと感じる部分がある。
初期のパワーメタル路線に戻ってくれとは言わないが、もう少しメタル要素が戻ってきてくれると嬉しいとは正直思う。
ただし今までのソナタを好きだった人が気に入る要素がふんだんに入っていることは確かで、ファンが失望することはないと言える。
そしてソナタの音楽としての地平を広げるというロックバンド精神は本物で、そこが自分が本当にこのバンドを尊敬している部分である。
どんな方向性に行くこともトニーは恐れていない。
例えファンからそっぽを向かれる可能性があろうとも、彼は自分自身を満足させることを優先している。
これぞ本物のアーティストではないか。
彼は勇敢な男である。
そしてそんなアーティスト的な姿勢でありながらファンもしっかりついてくるというのが凄い。
これは本当に音楽の神に選ばれた人にしか出来ないことである。
そんな才能のある人がやってるバンド、聴き続けるに決まってるじゃないか・・・!
点数
85点
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