Stratovarius – Visions[オリジナルアルバム全レビューシリーズPart1-6]

  


1. The Kiss of Judas
2. Black Diamond
3. Forever Free
4. Before the Winter
5. Legions
6. The Abyss of Your Eyes
7. Holy Light
8. Paradise
9. Coming Home
10. Visions (Southern Cross)


ティモ・トルキの才能が開花した出世作にして名盤

フィンランドのパワーメタルバンドStratovariusの欧州での人気を決定付けた6thアルバムで、ノストラダムスをテーマにしたコンセプトアルバム。
格段に音質が向上し、捨て曲もない遂に辿り着いたネオクラシカルパワーメタルの理想郷だ。
ティモ・トルキの才能がここに来て開花したことを感じさせられる、充実したメタルアルバムである。

アルバムはフィンランドのチャートで4位を記録。
バンドはヨーロッパを中心に評価を得て、大躍進することとなった。

楽曲レビュー

このアルバムには彼らの代表曲となった曲が収録されている。
それが#2“Black Diamond”で、チェンバロの音色によるネオクラシカルなイントロのフレーズが印象的な名曲である(このフレーズはサビでも使われる)。
サビ後のギターとキーボードによるソロバトルもベタだが素晴らしく、ネオクラシカル+パワーメタルという彼らのやりたいことをここに体現している。

クラシックとロックの融合という昔から行われてきた試みの一つの完成系がこの曲だろうと思う。
バロック音楽への憧憬が滲み出ている。
ヨルグのドラムも非常にパワフルで、この曲の魅力をより引き出している。
歌詞が恋愛の歌詞で普遍的なのも、この曲が多くの人々に受け入れられた理由の一つだろう。

このアルバムは1曲目の“The Kiss of Judas”から素晴らしい。
どっしりとしたヨルグのドラミングが活かされたミドルテンポの重厚な曲だが、サビは中々キャッチーで、一気にアルバムの世界観に引き込まれる。

#3“Forever Free”は私達は何者にも縛られず自由だと歌う、高揚感のあるサビを持ったキャッチーな疾走パワーメタルナンバーで、ファンが求めているのはこういう曲だよというナンバーだ。

箸休め的な北欧の叙情溢れる典型的な彼らのバラード#4“Before the Winter”に続く#5“Legions”は、攻撃的なリフがメタルらしさを醸し出すパワーメタルナンバー。
早い歌メロによるサビがまた強烈にキャッチーだ。
ネオクラシカルの要素も強く、イェンスがここでも大活躍している。
本当にこのアルバムは良い曲が多い。

ミドルテンポで一見地味だがやはりサビはキャッチーな#6“The Abyss of Your Eyes”、絶妙な位置に入っているネオクラシカルインスト#7“Holy Light”に続く#8“Paradise”がまたキラーチューンである。
強烈にフックのあるコーラスを持ち、何処かポップさもある曲だ。
この飛翔感のあるサビはガッツポーズものである。
歌詞は環境破壊への警鐘と言った所か(ありがちなテーマではある)。

恋愛関係の復縁をイメージさせる歌詞のこのアルバムの2つ目のバラード#9“Coming Home”に続く#10“Visions (Southern Cross)”はラストを飾る大作ナンバー。
目まぐるしく展開するプログレッシブな曲だが、つまらないパートが一切なく隙がない。
ノストラダムスの予言を引用した語りも入っていて、大仰な雰囲気を醸し出している。
ラストのパートは希望溢れる雰囲気となっていて、アルバムを聴き終わった後の後味が素晴らしい。

総評

これまでのStratovariusの弱点(良い曲とそうでない曲の差が激しい、B級メタル感が強いなど)をすべて克服した名盤である。
圧倒的に向上したティモ・トルキの作曲能力と、イェンスとヨルグの演奏力が合わさり、バンドとしてのマジックを生み出している。
捨て曲のない最高に充実したアルバムを6枚目にして作り上げた彼らに称賛を送りたい。
これだけ退屈な瞬間のないアルバムを作ったのであればこの点数をつけるしかないだろう。

点数

92点

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