フィンランドのレジェンドメタルバンドSonata Arctica。
ボーカルのトニー・カッコが実質的リーダーとしてバンドを率いていて、デビューは1999年。
4thアルバムReckoning Nightまではピュアなパワーメタルを追求していたが、5枚目のUniaで方向転換。
オペラティックでプログレッシブな方向へと舵を切った。
6枚目のThe Days of Graysでもその方向性を追求したが、7枚目のStones Grow Her Nameでは突如シンプルなロック路線となる。
8thアルバムPariah’s ChildではUnia以降のプログレッシブな路線と、初期のパワーメタル路線の融合とも言えるスタイルを披露。
その後は大きく路線変更することなく、現在まで精力的に活動を続けている。
その22年の歴史の中から、筆者が選んだ選りすぐりの10曲を紹介する。
古い順に紹介していこう。
1. My Land
ナイーブなSonata Arcticaの精神性を主張するような名曲。
メロウで叙情的なムードを押し出したアレンジは、他のパワーメタルバンドとは一線を画す。
しかしちゃんとギターはヘヴィであり、パワーメタルとしての形を十分に維持しているから面白い。
後半にかけての展開も完璧で、長らくライブでプレイされているのも納得である。
胸を掻きむしられるような、哀愁漂う旋律はこの頃ならでは。
2. Kingdom for a Heart
まるでRoyal Huntかというような、ネオクラシカルなイントロが印象的な曲。
歌メロもクールでカッコいいし、トニー・カッコの曲作りの才能が凝縮されている。
パワーメタルの教科書とも言えるような曲で、とにかくセンスが良い。
3. FullMoon
満月の夜になると狼になる男の物語を描いた、ちょっと歌モノメタル的な曲。
Sonata Arcticaの代表曲の一つで、サビのラナウェイ(run away)のコーラスはライブでは観客が歌うことになる。
あまりパワーメタル色を強く押し出している曲ではなく、叙情的な北欧ロックという感じで、普遍的なキャッチーさを持っている。
4. San Sebastian (Revisited)
Sonata Arcticaを代表するパワーメタルソングの一つ。
ひたするダブルベースドラムによるシンプルなリズムで突っ走るのだが、その上に乗るメロディは極上。
同じようなメロディの繰り返しなのに新鮮に聴こえるのは、トニー・カッコの作曲の妙。
ギターとキーボードによるソロも完璧だ。
歌詞は青春時代に一目惚れした女性のことを振り返っていて、まさかの恋愛ソングとなっている。
5. Tallulah
デビュー前の前身バンド、Tricky Means時代から存在したバラード曲。
普通の洋楽っぽさもあるメロディとアレンジで、普段メタルを聴かない人にもこの曲の良さは伝わるであろう名曲。
歌詞も普遍的で、恋愛関係にあった男女が元サヤに戻るまでの心境を綴っている。
6. White Pearl, Black Oceans…
Sonata Arcticaの音楽性の高さを見せつけた大作ナンバー。
重厚なクワイアをフィーチャーし、新たな領域に足を踏み入れている。
同じメロディでも毎回リズムが違う展開は新鮮だ。
ピアノも使われ、耽美的な世界観をとことん追求している。
Queenからの影響が顕著になり始めたのはこのあたりからだろう。
7. My Dream’s but a Drop of Fuel for a Nightmare
5thアルバムUniaを代表する情報量超濃密な傑作。
オペラティックなメタルという領域に足を踏み入れていて、ひたすら耽美的でありカオスでもある。
クワイヤもたくさん入っていて、ヘヴィメタル化したQueenとも言うべきか。
Uniaというアルバム自体異常に濃密だが、この曲はその中でも突出している。
8. Flag in the Ground
アイリッシュな香り漂う、ロマン溢れるパワーメタルナンバー。
歌詞はアメリカの開拓民である主人公が、置いてきた妻とまだ生まれていない赤ちゃんを気にかけるというもので、そのストーリーに合わせてミュージックビデオも作られている。
2回目のサビ以降の展開がかなり熱く、名曲である。
最後のサビのメロディが早くなるアレンジなど、細かい工夫も感じられる曲だ。
実は原曲はBlackOutという前身バンドTricky Beans時代からあった曲で、それをリアレンジしたものである。
YouTubeで聴くことが出来るが、悪くないもののFlag in the Groundのような壮大な雰囲気はない。
寝かして功を奏した例と言える。
収録アルバムThe Days of Grays (2009年)
↑Flag in the Groundのミュージックビデオ。
9. I Have a Right
子供たちの権利を歌詞のテーマにした、スルメ系名曲。
正直最初聴いた時は、ソナタにしては普通のロック調で単調で地味な印象があったが、聴き込むとこれは名曲だと気付いた。
ポイントはサビのキーボードによる裏メロだったりする。
ライブでは定番ナンバーになりつつある。
この曲の歌詞のテーマはA Little Less Understandingに引き継がれていて、A Little Less~では主人公の少年はもう少し成長している。
収録アルバムStones Grow Her Name (2012年)
↑I Have a Rightのミュージックビデオ。
10. Closer to an Animal
後期Sonata Arcticaの完成形と言える曲。
意外と複雑な曲構成になっているものの、キャッチーなメロディがすべてをまとめ上げている。
Unia以降追求してきたプログレッシブな路線が、この曲によって結実したと言えるのではないか。
歌詞は人類の英知を褒め称える一方で、何故それを地球を壊すことに使うのか、と警鐘を鳴らしている。
普遍的なテーマであり、このこともこの曲の神秘性を高めている。
↑Closer to an Animalのリリックビデオ。
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