British Lion – The Burning[レビュー]

  


2020年1月17日発売


1. City of Fallen Angels
2. The Burning
3. Father Lucifer
4. Elysium
5. Lightning
6. Last Chance
7. Legend
8. Spit Fire
9. Land of the Perfect People
10. Bible Black
11. Native Son


スティーブ・ハリスがIron Maidenで出来ないことを具現化した英国叙情ハードロック

イギリスの伝説的メタルバンドIron Maidenのベーシストであり首謀者であるスティーブ・ハリスが、30年以上のキャリアを経て初めて始動させた別バンドがこのBritish Lionで、7年振りとなるセカンドアルバムが本作The Burningである。

Iron Maidenでは基本的にはもう少しアグレッシブさのあるヘヴィメタルを保っているが、このアルバムを聴くとスティーブ・ハリスの本質はやはりブリティッシュロックなのだということが分かる。

メロディックな曲、動き回るベース、ツインギターと確かにIron Maidenに共通する要素はある。
しかしこれはメタルではなく、イギリスのしっとりとした叙情性が迸る洗練されたハードロックである。

思いのほかメロディアスでフックがあり、スティーブ・ハリスのメロディセンスの素晴らしさを再確認した。

Iron Maidenでも多くの曲を彼が書いているが、他のメンバーのアレンジによるマジックが働いていて、それが彼ら流のオンリーワンなヘヴィメタルを生み出している。
今作では恐らくアレンジもスティーブが主導していて、彼の地の持ち味がそのまま出ている。

楽曲レビュー

ミュージックビデオが作られた#1“The Burning”はギターのメロディリフがIron Maidenを彷彿とさせる曲。
サビはしっかりとフックのあるメロディとなっていて、ミュージックビデオに選ばれたのも納得の出来。

#7“Legend”はサビが解放感のあるキャッチーなロックチューンで、爽やかすぎてメイデンでは出来ないであろう曲。
こういう曲が聴けるのがサイドプロジェクトの醍醐味だろう。

先行シングルになった#8“Spit Fire”は典型的な70年代ハードロックっぽいリフを中心に展開するが、メロディが同郷のロックバンドMUSEを彷彿とさせ、モダンさも併せ持っている。
湿りっけのあるメロディで、やはりスティーブもイギリス人なのだなと感じさせてくれる。

アルバムは叙情的で穏やかなバラード#11“Native sun”で幕を閉じる。
ボーカルのリチャードの魅力が活かされた哀愁たっぷりの楽曲である。

総評

全編に漂う英国の哀愁がとても心地良い。
メイデンのようなバンドとしてのマジックは感じないが、とにかく楽曲が良いので最後まで飽きることなく聴ける。

ボーカルは少し掠れ気味の声質で儚さを内包しており、この叙情的なハードロック音楽を歌い上げるのにピッタリな声質である。
少し小粒感はあるものの高音は伸びるし、良いボーカルを見つけたと思う。

プロダクション的にはスティーブのスタジオで録音した影響かスケール感が感じられずこじんまりとしたアマチュア的な音だが、この作品には合っている気もする。
少なくともこの音楽を表現するのには十分だろう。

Iron Maidenのファンなら間違いなく感じる所のあるアルバムだと思う。
ほとんどのメイデンファンがスティーブ・ハリスの曲が好きでIron Maidenを聴いていると思うので、メタルじゃなきゃダメという人以外のメイデンファンは恐らくこのバンドも好きになるだろう。

英国人としての誇りがこのアルバムには刻まれていて、それが何とも心地良い。

点数

88点

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