Helloweenのアルバム16枚のおすすめランキング(+全アルバムレビュー)

Helloweenの全オリジナルアルバム16枚の格付け

今回はHelloweenのニューアルバム「Helloween」の発売を記念して、Helloweenの全オリジナルアルバム16枚をランク付けしてみようと思う。
ランキングの他にその順位にした理由も語っている。

正直このランキングを決めるのにはかなり悩んだ。
色々異議があるかもしれないが、真剣に考えたので楽しんでもらえたら幸いだ。
順位の低いほうからカウントしていく。

16位 Chameleon (1993)

これは即決だった。
勿論いい曲も入っているが、Helloweenに求められているものとはあまりにも乖離していた。
これはヘヴィメタルではなく、ポップ/ロックアルバムだ。
キスクのエゴが出過ぎている。

Helloweenはこういうことも出来るんだぞ、という証明にはなったが、別にHelloweenがやらなくても、このような音楽なら他のバンドでも出来るのだ。
その意味において、このアルバムは必然的にこの位置なのである。
ヴァイキーのペンによるバラード、Windmillの出来が異常に冴えている。

15位 Pink Bubbles Go Ape (1991)

名作Keeper of the Seven Keys: Part IIの次の作品だったので期待されていたと思うが、この作品はイマイチだった。
メインソングライターの一人だったカイ・ハンセン(ギター)が抜けて、ローランド・グラポウが加入しての初のアルバムだったが、バンドのケミストリーは消えていた。

勿論、これはカメレオンと違ってヘヴィメタルアルバムで、Helloweenの音楽ではある。
しかし単純に曲のクオリティが下がっている気がする。
一人メンバーが変わっただけでこうもサウンドが変わるのか、と驚かされる。

新加入のローランドはThe Chanceという良曲を書いているし、頑張ってはいるのだが。
この曲がこのアルバムのベストチューンだと思う。
ストーム・トーガソンの手によるアルバムカバーアートも冴えない。

14位 7 Sinners (2010)

正直ここから上のランキングに悪いアルバムはないと思う。
このアルバムにも悪い所は見つからない。
ただ、他のアルバムと比べるとちょっと、印象が薄かったというだけの話だ。

このアルバムの前に出した、アコースティック/シンフォニックセルカバーアルバムUnarmedの反動で、メタルバンドということを意識したアグレッシブな曲が並ぶ。
このアルバムのメタリックなイメージは、アンディ作のAre You Metal?に象徴されている。
ヴァイキー作の、ジェスロ・タルを意識したというRaise the Noiseなんかも中々カッコいい。

13位 My God-Given Right (2015)

バンドとして安定期に入った時期のアルバムで、Straight Out of Hellの延長という感じ。
変に気張らず、余裕を感じさせる自然体なバンドサウンドが聴ける。

他のアルバムよりは興奮度が低いかな、ということでこの位置だが、いかにもなヴァイキー節でファンを満足させるBattle’s Won、アンディによる、名曲Powerを彷彿とさせるMy God-Given Rightなど、聴きどころは多い。
若干新鮮味が薄いきらいもあるが、良いアルバムである。

12位 Rabbit Don’t Come Easy (2003)

これも普通に良いアルバムだ。
典型的なHelloweenのアルバムという感じで、ハッピーなムードのあるアルバムである。

アンディの書いた1曲目のJust a Little Signには驚いた。
ハードロックソング担当だと思ってたが、パワーメタルソングも書けたのか。
しかもクオリティが高く、アンディの器用さが窺える。

典型的なHelloweenソングThe Tune、ちょっとポップなDo You Feel Goodと、ヴァイキーも良い曲を書いている。
それまで影の薄かったマーカスが、ここに来てHell Was Made in Heavenという佳曲を書いたことも、特筆すべきことだろう。

11位 Better Than Raw (1998)

ローランド・グラポウとウリ・カッシュが加入しての第三弾アルバム。
モダンでちょっとこなれてきた感じのアルバムで、余裕が窺える。
秀逸なイントロに続くPushからかなりヘヴィでアグレッシブで、攻めの姿勢を見せる。

シングルでミュージックビデオも作られた、メロディアスでキャッチーな佳曲I Can、プログレッシブなRevelation、ラテン語で歌われる、ゴスペルちっくなパワーメタルソングLaudate Dominumと、バラエティに富んだアルバム。

10位 The Dark Ride (2000)

ローランドとウリがモダンでヘヴィな方向に持っていこうとしたため、ヴァイキーが大嫌いなアルバム。
しかし客観的に聴いてみると、確かに妙にダークな曲があったりするが、全体的にはいつものHelloweenの範疇である。

ヴァイキーの作ったAll Over the Nations、SalvationはこれぞHelloweenという出色の出来だし、ウリはモダンだがメロディが印象的でキャッチーなMr. Tortureを書いているし、シングルになりPVも作られた、アンディ作の哀愁漂うバラードIf I Could Flyも素晴らしいし、どう考えてもいいアルバムだ。

ローランドとウリは、このアルバムがきっかけで脱退することとなったが、彼らの貢献がなければ90年代のHelloweenは生き残れなかったかもしれない。

9位 Straight Out of Hell (2013)

Helloweenのアイデンティティである陽気さを全面に打ち出した、非常に彼ららしいアルバム。
正にハッピーメタルと形容するに相応しい、ポジティブなパワーに満ち溢れている。

アンディ作のミステリアスなリフが印象的なNabataea、マーカス作のハッピーパワーメタルソングFar From the Stars、ハードロック系でサビがキャッチーなWaiting for the Thunderと、佳曲が盛りだくさん。

鼻歌で録音しておいたふと思いついたメロディから生まれたという、典型的なHelloweenっぽさもあるが、緊張感の凄まじいBurning Sunは名曲だ。
ソングライターが4人いるという強みを、最大限に活かして作られたアルバムだ。

8位 The Time of the Oath (1996)

前作Master of the Ringsの勢いのまま作られた、強力なアルバム。
ヴァイキー作の超絶キャッチーなパワーメタルソングPowerは、現在もライブでは欠かせない代表曲だし、アンディ作の哀愁漂うサビが印象的なForever and Oneは、メタルファンのみならず、一般層にもアピールし得るポピュラリティを持っている。

ヴァイキー、アンディ、ローランド、ウリと、趣味も性格もバラバラの4人が曲を書いているのに、何故かまとまっているから不思議だ。
これぞバンドマジック。
妙に音質が悪いのが残念である。

7位 Gambling with the Devil (2007)

これもHelloweenらしい素晴らしいアルバム。
正直この辺りの順位のアルバムはどれも同じくらい素晴らしいという感じで、その日の気分によってランキングが変わるんじゃないかというぐらい誤差である。

アンディ作のアグレッシブなKill Itに続くヴァイキー作のThe Saintsは、これぞHelloweenというクラシカルで希望的なメロディに満ちた名曲である。

マーカスの作曲能力も完全に開花していて、Final Fortuneという、とにかくメロディが強力なパワーメタルソングを書いている。
ポップでキャッチーなヴァイキー作のCan Do Itは、シリアスなアルバムの中の一服の清涼剤。

6位 Walls of Jericho (1985)

Helloween流のヘヴィメタルが産声を上げた瞬間を捉えた、歴史的な意味でも貴重なアルバム。
スラッシーなギターにカイ・ハイセンのラフな歌声によるメロディアスなメロディ。
まだまだ粗削りではあったが、後にパワーメタルと呼ばれる明らかに斬新な音楽を演奏していた。

ボーカルに誘われたマイケル・キスクがこのアルバムを聴いて、早くて激しすぎて趣味に合わないから断った話が有名。

ヴァイキー作のHow Many Tearsの物悲しいメロディを聴くと、やはりドイツの歌謡曲シュラガーからの影響が大きいのではないだろうかと感じさせられる。
この曲はアレンジを変えたら、普通にポップスでも通用するような良質なメロディを持っている。

5位 Master of the Rings (1994)

カメレオンの発表によって人気が落ち、バンドがどん底の時期にあった中で発表された、バンドの起死回生の一作。
新ボーカルに迎えられたのはまさかの、ハードロックバンドPink Cream 69のアンディ・デリスだった。(ちなみにドラマーのウリ・カッシュもこのアルバムから参加)

だがPink Cream 69も聴いている筆者からすると、確かにHelloweenとPink Cream 69には通ずるものがある。
どちらも哀愁漂うメロディを大切にしている点だ。

だからアンディのハードロックソングを、パワーメタルのアレンジにしても違和感がないのである。
ヴァイキーはそれを分かっていて、アンディを誘ったのだろう。

このアルバムによって、パワーメタルバントとしてのHelloweenは復活したのである。
Helloween流パワーメタル復活を告げる、ヴァイキー作のWhere The Rain Grows、アンディ節炸裂の、イントロが印象的なPerfect Gentlemanと、強力な楽曲がたくさん収録されている。

4位 Keeper of the Seven Keys: The Legacy (2005)

あのキーパーシリーズ(Keeper of the Seven Keys: Part IとKeeper of the Seven Keys: Part II)の続編として、2005年に発表されたのが本作である。
2枚組で、気合いの高さが窺えるアルバムである。

典型的なこれぞHelloween、というキーパーサウンドを彷彿とさせる楽曲は、Disc 1に多く収録されていて、Disc 2はアンディ・デリス加入以降のHelloweenの音楽性の柱となっている、ハードロック系ナンバーを多く収録している。

このアルバムがこのランクに位置している理由のほとんどは、The King for a 1000 Yearsが収録されているという点である。
アルバム冒頭に収録されている13分にも及ぶ大曲だが、退屈な瞬間が全くない名曲である。

基本的に疾走パワーメタルソングでありながら様々に展開し、Helloweenに必要なものがすべて詰め込まれている。
この1曲だけでもこのアルバムは価値があるが、トータルで見ても勿論素晴らしい。

個人的にThe Invisible Manはサシャの最高傑作だし、同じくサシャのペンによるSilent Rainも、Helloweenのお手本のような曲で素晴らしい。
実際サシャはヴァイキーの作曲スタイルを真似て、この曲を作ったらしい。
Disc 2は少し弱い気もするが、Disc 1はキーパーシリーズにも引けを取らない、圧倒的なクオリティである。

3位 Keeper of the Seven Keys: Part I (1987)

ここであの名作、キーパーシリーズのパート1の登場である。
キーパーシリーズがワンツーフィニッシュだと思っていた人も、多いのではないだろうか?

当時若干18歳のスーパーボーカリスト、マイケル・キスクの加入は、バンドのレベルを明らかにネクストレベルに引き上げた。
キスクの歌声は本当に素晴らしく、典型的なメタルボーカルにありがちな金切り声ではなく、そのオペラのように伸びやかに歌い上げるスタイルは、後にパワーメタルボーカルのお手本となった。
ある意味「癒し」を、彼の歌声は持っているのだ。

楽曲自体も明らかに前作より強力になっていて、アルバム全体を通して一分の隙もない、カイ・ハンセン流のパワーメタルが展開されている。
カイ・ハンセンはI’m Alive、Future World、Halloweenと、バンドの代表曲となる曲を書き上げている。
ミュージックビデオも作られたHalloweenは、完璧な構築美を見せつけた彼らの名曲の一つである。

2位 Helloween (2021)

ここで2021年にリリースされたHelloweenの登場である。
2016年にマイケル・キスクとカイ・ハンセンが、Helloweenのツアーに参加すると聴いた時、衝撃が走った。

もうマイケルとカイとヴァイキーが3人揃うことなんて、一生ないと思っていたからだ。
勿論このメンバーでのアルバム制作の期待は膨らみ、遂に現実のものとなったのがこのアルバムである。

Helloweenのすべての歴史を飲み込んだ、新たな名盤である。
トリプルボーカルになったことにより表現力が格段に増し、ある意味メタルオペラの様相を呈している。
カイ・ハンセンがギターアレンジに関わった影響かどうかは不明だが(恐らくそうだが)、アレンジの深みが増している。

殆どのメンバーが作曲出来るという強みを活かし、ある意味ベストアルバム的なアルバムを作り上げた。
アルバムの最後に収録されているSkyfallは、カイ・ハンセンのペンによる「Helloween流ヘヴィメタル」を見せつけた新たな名曲だ。

1位 Keeper of the Seven Keys: Part II (1988)

やはり1位はこのアルバムしか考えられなかった。
基本的に歴史的意義よりも、聴いた気持ちよさのほうが大切だと思っているが、このアルバムはどちらの意味でも突出している。
前作Keeper of the Seven Keys: Part Iで完成させた、キーパーメタルを更に成熟させた完璧な作品だ。

このバンドの奇跡は、カイ・ハンセンとマイケル・ヴァイカートという、2人の天才が一緒のバンドにいたこと。
大体天才が2人いると対立してどちらかが出ていくが、Helloweenもその通りになりカイはこの後脱退している。
だからこそカイとヴァイキーがいた時代は貴重であり、緊張感の中凄いものを生み出すことが出来たのだ。

このアルバムは前作と違い、ヴァイキーが主導権を握っているが、カイも負けじとI Want Out、March of Timeというバンドの代表曲を書いている。
疾走ダブルベースドラムに、太陽のように輝くメロディが乗るヴァイキーの作曲したEagle Fly Freeは、今でも多くのパワーメタルバンドの指標となっている。

そしてその斬新な音楽を、伸びやかな歌声で完璧に歌い上げるマイケル・キスク。
すべてのレベルでこのアルバムは超越していたので、このアルバムは今でもパワーメタルの教科書となっているのである。

まとめ

本当にいいアルバムが多くて悩んだが、ベスト3とワースト1は即決だった。
こうして改めて振り返ってみて、Helloweenが偉大なバンドだということを再確認した次第だ。

Helloweenは常に、他のバンドだったらバンドの中心人物となっていたであろう、本当に才能のある人達の集まりだった。
ワンマンバンドではなく、常に色々なコンポーザーが混在しているとこが、Helloweenの魅力の一つだと思う。

マイケル・キスクとカイ・ハンセンが再び参加して、新たな全盛期を迎えたと言ってもいい現在のHelloween。
まだまだお楽しみは続きそうだ。

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