2022年3月11日発売
1. Imperium
2. Kaisarion
3. Spillways
4. Call Me Little Sunshine
5. Hunter’s Moon
6. Watcher in the Sky
7. Dominion
8. Twenties
9. Darkness at the Heart of My Love
10. Griftwood
11. Bite of Passage
12. Respite on the Spitalfields
日本では人気と知名度が明らかに欧米に追い付いていないバンドの一つ
前作Prequelleが全米3位を記録し、グラミー賞にも2部門ノミネートされるなど、今最も人気のヘヴィメタルバンドの一つであるスウェーデンのGhostの新作となる5thアルバム。
同郷のABBA譲りのポップなメロディをドゥーム/クラシックメタルに落とし込み、モダンなフィーリングもあるそのサウンドは今までありそうでないものだった。
白塗りメイクに神官のようなコスチュームは、その神秘的でアーティスティックなサウンドの魅力を演出している。
待望の4年振りの新作はどうなっているのか。
楽曲レビュー
#1“Imperium”はアコースティックギターによるインスト曲。
途中からエレキギターによるツインギターが入り、アルバムのイントロとして高揚感を煽るものになっている。
#2“Kaisarion”はメジャーキーの明るいナンバー。
イントロから、らしからぬトビアスのハイトーンシャウトが炸裂。
80’sっぽいというか、アメリカンプログレッシブハードっぽさのある曲だ。
キャッチーな歌メロはやはり流石。
テンポも速く爽やかさがあり、Ghostとしては明らかに異色作だが様になっている。
#3“Spillways”はABBA風のピアノで始まる、かなりポップなメロディがGhost節な曲。
ダークなメタルらしさはほとんどないが、歌メロ重視の軽快なサウンドが心地良い。
これもかなり80’sっぽい良曲だ。
#4“Call Me Little Sunshine”はやっと登場するGhostらしいドゥーミー系のミドルテンポ曲。
ちょっとブルージーなフィーリングもあるムーディーな曲となっている。
やはりメロディは何処かポップさがあり、聴きやすい。
アルバムからの2ndシングルで、リリックビデオが作られた。
#5“Hunter’s Moon”はアルバムからのファーストシングルとなったかなりキャッチーなフックを持った曲。
前作に収録されていたRats系の正統派クラシックメタル系だが、モダンなフィーリングも強い。
間奏ではヘヴィなリフも登場する。
ホラー映画のハロウィンKILLSのエンドロールの曲としても使われ、ミュージックビデオも作られた。
↑ Hunter’s Moonのミュージックビデオ。
#6“Watcher in the Sky”はNWOBHMっぽい正統派なリフで始まる曲。
ダークでヘヴィな雰囲気だが、サビはキャッチーだ。
Cメロのドラマティックな、高揚感を煽る展開が素晴らしい。
間奏ではツインリードギターも炸裂する。
曲はフェイドアウトしながら余韻を残して終わる。
管楽器を使ったダークなイントロ、#7“Dominion”に続く#8“Twenties”はトビアスがSlayerとMissy Elliottが出会ったと表現する今作の異色作。
セカンドラインを参照したという管楽器中心のアレンジが印象的で、ヘヴィでカオスな雰囲気が漂っている。
パレードを彷彿とさせるシアトリカルな雰囲気もあるが、メロディはあまりメロディアスではなくブラックミュージックの香りが漂っているのがミソ。
#9“Darkness at the Heart of My Love”は叙情的なアコースティックギターから始まるバラード。
普遍的な良いメロディによる、素晴らしい曲だ。
哀愁を漂わせているが、優しさと希望も感じさせる。
スケール感があり、売れているバンドの地力を見せつけた曲と言える。
#10“Griftwood”はGhostらしい軽快でポップな曲。
サビのメロディが印象に残り、個人的に今作で特に気に入っているナンバー。
#11“Bite of Passage”は次の曲のイントロ曲。
ラストを飾る#12“Respite on the Spitalfields”は穏やかな雰囲気のアコギロックバラード。
サビ前だけヘヴィだが、基本的にメロディアスで叙情的な内容。
シリアスな展開とメロディアスなサビのコントラストで、緊迫感を作り出している。
総評
相変わらず音の積み重ねが繊細で、丁寧にムードを作り上げようとして作られている。
Ghostのブランドを絶対に崩さない、という意地とこだわりを感じるアーティスティックなアルバムである。
今作でもクラシックロックな感性、80年代正統派メタルの感性、現代的なオルタナティブな感性が融合していて、色々なタイプのロック好きに届きそうな普遍性が息づいている。
美しさも内包したこのスタイルによる、トビアスのソングライティングの巧みさが本作でも際立っている。
同郷のABBAを継承したような叙情的でポップなメロディセンスには、やはり北欧らしさも感じることが出来る。
Ghostが現在進行形で最高峰のバンドだと証明した傑作である。
Ghostここにありという作品だが、同時に#2“Kaisarion”や#8“Twenties”など新たな領域にも足を踏み入れ、挑戦していることも見逃せない。
今作は全米で、前作の3位を超える2位にチャートイン。
相変わらずの圧倒的な人気ぶりを見せつけている。
日本では人気と知名度が明らかに欧米に追い付いていないが、この新作によって日本での状況が少しでも変わることを期待したい。
これまで来日はフェスのみで、単独公演を実現していないのでそれも期待したい。
彼らが欧米で大人気なのはライブの魅力もあるらしく、筆者も一度見てみたいと思っている。
点数
90点
お気に入り曲
Spillways, Call Me Little Sunshine, Hunter’s Moon, Twenties, Darkness at the Heart of My Love, Griftwood
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