アメリカのヘヴィメタルの名盤20選

   
このサイトでは主にヨーロッパのメタルバンドを紹介しているが実はそれらは世界的にはマイナーな部類で、世界的に売れているバンドはほとんどアメリカに集中しているというのが実情である。

筆者はヨーロッパのバンドが主食だが、アメリカのバンドの中にも好きなバンドがたくさんある。
というわけで、絶対に聴くべきアメリカのヘヴィメタルの名盤を20枚選出してみた。
アメリカのヘヴィメタルの多様さ、懐の深さを感じられるセレクションになっていると思う。

Five Finger Death Punch – American Capitalist

  


2011年10月11日発売


キャッチーなメロディを売りにしたグルーブメタルバンドFive Finger Death Punchの人気を決定づけた3rdアルバム。
ヘヴィネスをエンターテイメントとして昇華した曲作りは孤高の域に達している。
アルバムタイトルには資本主義を肯定し、その上で自分の怠惰と戦えという思いが込められている。

Slipknot – Vol. 3: (The Subliminal Verses)

  


2004年5月25日発売


激烈なエクストリームメタルではあったが洗練されていてモダンでもあり、人気が爆発していたSlipknotが発表した3rdアルバム。
メロディを積極的に取り入れ、よりキャッチーになっているのが特徴だ。

コリィ・テイラー(ボーカル)の歌の上手さがここに来て活かされている。
苛烈なだけではない、器の広さをも見せつけた傑作。

System of a Down – Mezmerize

  


2005年5月17日発売


人気オルタナティブメタルバンドの一つではあるが、予測不可能なリズム展開、ハードコア由来の苛烈さもある異端なバンドでもある、System of a Downの4thアルバム。
その特異な音楽性だけでも貴重な存在だったが、段々とフックのあるメロディも取り入れていき、このアルバムでは歌がかなりフィーチャーされている。

メンバーは皆アルメニア系アメリカ人で、その独特なメロディセンスはその出自から来ていると思われる。
同じ年(2005年)の11月に発表されたHypnotizeも同時期にレコーディングされた作品で、このアルバムの対になっていると言える作品である。

Avenged Sevenfold – Nightmare

  


2010年7月23日発売


Avenged Sevenfoldはメンバー全員が幼馴染同士で結成された稀有なバンドであったが、2009年の12月に曲作りの中心人物であったドラマーのザ・レヴが薬物接種で他界。
このアルバムはその悲しみを乗り越え、Dream Theaterのマイク・ポートノイをヘルプに迎えて制作された作品である(レヴ死去前に楽曲はほとんど完成していた)。

3rdアルバムではヨーロッパのパワーメタルバンドの影響を取り入れたり、4thアルバムではカントリーやミュージカル風な曲をやるなど音楽性を広げていたが、このアルバムではメロディのフックはそのままに芯が一つ通ったような、スケール感のあるアメリカらしい重心の低いヘヴィメタルを展開。

俺達はアメリカのバンドなんだ、という矜持を見せつけている。

Dream Theater – Images and Words

  


1992年7月7日発売


プログレッシブメタルというジャンルを確立したと言っても過言ではない作品。
あまりにもテクニカルでプログレッシブだがしっかりとヘヴィメタルであり、キャッチーな歌メロがすべてをまとめ上げている。

このアルバムの成功は多くのミュージシャンに影響を及ぼし、今なおDream Theaterフォロワーを生み続けている。
Dream Theaterが新作を出すといつもこの作品と比較されてしまうが、この作品の後もDream Theaterは良質な作品をコンスタントに発表し続けている。

Linkin Park – Hybrid Theory

  


2000年10月24日発売


90年代後半から2000年代前半にかけて流行していたラップ・メタルの潮流に乗り、一気にシーンのトップに躍り出たLinkin Parkの1stアルバム。

時代の空気を取り入れたサウンドの上で、カリスマボーカリストのチェスター・ベニントンがシャウト気味にキャッチーなメロディを歌う。
コンパクトにまとめ上げられた楽曲に分かりやすいサビと、これは売れないわけがないという名盤。

Pantera – Far Beyond Driven

  


1994年3月22日発売


前2作で90年代のヘヴィメタルの在り方を示し、圧倒的な支持を得たPanteraの7作目。
今作では伝統的ヘヴィメタルらしいメロディ、叙情性をより排除し、攻撃性に特化。
容赦のないリフ攻撃による無慈悲なPantera流グルーブメタルを完成させている。

このアルバムがアメリカの総合チャートで1位を記録したことは、ブルータリティが一般層にも受け入れ始められていたことを示している。

Mastodon – Hushed and Grim

  


2021年10月29日発売


イマイチ日本では知名度が低い感があるが、アメリカでは圧倒的な支持を得ているメタルバンドの一つ。
単純にプログレッシブメタルと一言では括れない高い音楽性を持っていて、スラッジメタルやハードコアの要素も強い。

この最新作Hushed and Grimでは2枚組86分という圧倒的な情報量で、現代ヘヴィミュージックの縮図とも言える音世界を紡ぎ出している。

Evanescence – Fallen

  


2003年3月4日発売


アメリカで流行っていたラップ/ニューメタルとヨーロッパ的感性のゴシックメタルが融合していたことがアメリカ人に新鮮に響いたのか、大ヒットを記録した1stアルバム。

クワイヤやストリングスが大々的に取り入れられていて、明らかに本質はゴシック系メタルバンドなのにアメリカで売れたのは凄い。
女性ボーカルのエイミー・リーの歌声は特別個性的なわけではないのだが、耳馴染みが良くキャッチーに響くのが強み。

Korn – Korn

  


1994年10月11日発売


カート・コバーンが自殺したのと同じ年に、新たな時代の到来を告げるかのように発表されたKornのデビュー作。

ヒップホップ由来のリズムに重低音を強調した無機質なリフ、その上に乗るジョナサン・デイヴィスの鬱屈した感情を吐き出したようなボーカル。
その組み合わせはすべてが新しかった。

ニューメタルの勃興はここから始まったと言える、ゲームチェンジャー的作品。

Megadeth – Countdown to Extinction

  


1992年7月14日発売


Megadethの特徴であったスピード感を伴った複雑なスラッシュメタルという路線から方向転換、ミドルテンポの曲を中心にデイヴ・ムステインの歌を強調したような内容となった5th。
普通のメタルバンドになった感はあるがクオリティは高くこれが大成功、全米2位の大ヒットを記録した。

テンポは落ちたがグランジブームに迎合したという感じでもなく、上手く彼らのアイデンティティを保ちつつ時代に合わせることに成功したアルバムである。

Metallica – Metallica

  


1991年8月12日発売


あまりにも影響力の大きい、90年代のヘヴィメタルの方向性を決めたとも言えるMetallicaの代表作。
当時台頭していたグランジ、オルタナティブの空気感を取り入れ、ミドルテンポでリフオリエンテッドだが歌もフィーチャーした作風は革新的だった。

ジェイムズ・ヘットフィールドの歌の説得力が増しているのも注目すべき点だ。
動員数の増えていくライブ会場において、大人数の観客を熱狂と興奮に巻き込んでいくには重心の低いこのアンサンブルが必要だったのだ。

Mötley Crüe – Dr. Feelgood


1989年9月1日発売


グラムメタルバンドの頂点に君臨し、他の同系統のバンドとの格の違いを見せつけた彼らの代表作。
彼ら流のバッドボーイズロックンロールを、プロデューサーのボブ・ロックが洗練された音へとまとめ上げている。

グラマラスでありワイルドで、80年代のアメリカの輝かしいヘアメタル時代の最後を飾るに相応しい作品。
疾走感溢れる代表曲Kickstart My Heartを収録。

Between the Buried and Me – Colors


2007年9月18日発売


時代を超越した、プログレッシブメタルの新たな金字塔となったと言える彼らの4枚目。
基本的には複雑なリズムが織り成すプログレッシブデスメタルなのだが、そこにジャズ、ブルーグラス、タンゴなど一見関係のなさそうなジャンルが飛び道具的に使われることでカオスな様相を呈している。

プログレッシブメタルの新たな方向性を提示して見せた、野心的なバンドによる挑戦的な作品。

Riot – Thundersteel

  


1988年3月24日発売


長い休止期間を経て、メインソングライターであるマーク・リアリ(ギター)以外のメンバーを全員チェンジして発表された6枚目。
休止前はトラディショナルなヘヴィメタルをプレイしていたが、このアルバムからアグレッシブなパワーメタルスタイルへと音楽性を変え、ファンを驚かせた。

しかしRiot特有の叙情的なメロディは受け継がれており、泣きのバラードBloodstreetsは今でも人気が高い。
表題曲にしてアルバムのオープニングナンバーであるThundersteelは、今でもパワーメタルの名曲として語り継がれている。

Bigelf – Cheat the Gallows

  


2008年8月12日発売


鍵盤奏者兼シンガー、デーモン・フォックス率いるBigelfの3枚目。
マイナーなバンドだったが、元Dream Theaterのマイク・ポートノイが絶賛したことにより一躍注目を集めた。

アメリカ出身ながら、英国の往年のロックへの傾倒が強く感じられる古ロック系バンドで、分厚いギターとキーボードによる音の壁のようなサウンドはかなり個性的。
意図的に古臭い音になるように録音されていて、聴いていると70年代にタイムスリップしたような感覚になるが、メロディにはポップなセンスがあり聴きやすい。

Pink Floyd、Beatles、Black Sabbath、Queenというバンドの並びにピンと来る人は是非聴いてみて欲しい。

Anthrax – Among the Living

  


1987年3月22日発売


Public Enemyと共演するなど、当時から他のスラッシュメタルバンドとは違うスタンスを打ち出していたAnthraxの3枚目。
掛け声が多様され、ハードコア由来のスポーティなスラッシュメタルという独自の音楽性を完成させている。

当時一緒にツアーをしていたMetallicaのクリフ・バートン(そのツアー中に事故死)に捧げられたアルバムでもある。

Alice in Chains – Dirt

  


1992年9月29日発売


同じシアトル出身のバンドだったため、NirvanaやPearl Jamなどと一緒にグランジムーブメントの一群として括られていたが、明らかにヘヴィメタルをルーツとして持っていたバンドAlice in Chainsの2枚目。

気だるくヘヴィでダウナーなリフの上に、レイン・ステイリーのエモーショナルな歌唱が乗るその世界観は余りに重く、グランジ版Black Sabbathとも称される。

彼らの提示した新世代のヘヴィメタルはアメリカの大衆からも受け入れられ、総合チャートで6位を記録した。
シアトルの音楽シーンを舞台にした映画「シングルス」のサウンドトラックに使用されたWould?は彼らの代表曲の一つ。

Guns N’ Roses – Appetite for Destruction

  


1987年7月21日発売


グラムメタルムーブメントの終わり間際に登場した王道アメリカンハードロックの真打ち、Guns N’ Rosesの衝撃のデビューアルバム。
若者らしい初期衝動を内包しつつも完成され、洗練されていたそのサウンドで、発売した当初は緩やかな反応だったものの約1年をかけて全米1位を獲得。

キャッチーで普遍的なバラード曲Sweet Child o’ Mineの存在は、このバンドがハードロックという狭い範疇だけで語られるバンドではないことを示している。
良い物は時の試練を超えるということを証明する傑作。

Symphony X – Paradise Lost


2007年6月26日発売


超絶ギタリスト、マイケル・ロメオ率いるプログレッシブパワーメタルバンドSymphony Xの7枚目。
ジョン・ミルトンの1667年の叙事詩「失楽園」からインスピレーションを得たコンセプトアルバムとなっている。

ネオクラシカルメタルからの影響が根本にあり、シンフォニックな感性も持ち合わせていて、アメリカ出身のバンドとしてはかなり異質なサウンドである。
ギターリフは時代に合わせてかなりヘヴィでアグレッシブで、ラッセル・アレン(ボーカル)の歌唱もがなりを取り入れたかなりアグレッシブなものに変貌している。

ヨーロピアンパワーメタルへのアメリカからの一つの回答とも言えるかもしれない。

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