2021年10月22日発売
1. The Alien
2. Answering the Call
3. Invisible Monster
4. Sleeping Giant
5. Transcending Time
6. Awaken the Master
7. A View from the Top of the World
素晴らしい演奏、素晴らしいプロダクション、平凡な歌メロ
世界の頂上からの眺めという仰々しいタイトルのついた、プログレッシブメタルモンスターDream Theaterの15枚目のオリジナルスタジオアルバムが登場。
意味深で壮麗なアートワークはヒュー・サイム(Rush、Iron Maiden、Whitesnake、Aerosmithなど)によるもので、いかにも彼ららしい。
ミックスとマスタリングはアンディ・スニープ(Judas Priest、Megadeth、Arch Enemyなど)が担当していて、2020年に発表されたジョン・ペトルーシのソロアルバムTerminal Velocityでも彼はミックスとマスタリングを担当していたので、その出来が評価されて本体のDream Theaterでも起用されることになったのだろう。
本作はバンドが作った新しいスタジオ、その名もDream Theater Headquartersでレコーディングされた最初のアルバムでもある。
前作Distance over Timeはライブフィーリングに満ちたオーガニックなサウンドが新鮮なアルバムだったが、新作はどうなっているのか。
楽曲レビュー
#1“The Alie”は近年のDream Theaterらしいヘヴィでダークなイントロによって始まる。
その後はすぐに明るくなりプログレチックに。
2回目のサビの後はお決まりのテクニカルなインストパートへ移行する。
ヘヴィで最近のDream Theaterらしさもあるが初期のフィーリングもあり、今の彼らと過去の彼らが邂逅したような曲と言える。
最後は希望的な歌メロディが展開され、アウトロはきっちりとヘヴィなリフで締める。
ちなみにアルバムからのファーストシングルはこの曲であった。
#2“Answering the Call”は普通のヘヴィなプログレメタルナンバーで、あまり特筆するべき所はないが、ジョーダンのEDM的アプローチなキーボードの使い方はちょっと面白いと思った。
サビが何処か分かるくらいにはキャッチーではある。
#3“Invisible Monster”はダークなミドルテンポナンバーでアルバムからの2ndシングル。
サビは比較的印象に残りやすく、覚えやすい。
ジョーダンのキーボードが曲全体のムードを支配している。
#4“Sleeping Giant”は複雑なリズムがDream Theaterらしい10分越えの長尺ナンバー。
メタルとプログレを行ったり来たりで、正にDream Theaterといった曲。
間奏パートではファンが望むテクニカルインストをたっぷりと堪能出来る。
#5“Transcending Time”はアルバムのムードを変える、アクセント的な役割を担っている曲。
Rushライクな、ポジティブなフィーリングに満ちたプログレナンバーだ。
キーボードは、Moon Safariとかが使ってそうな柔らかい音色を使って雰囲気を出している。
あまり印象に残るフレーズ自体は少ないが、雰囲気は良い。
ラストはピアノで静かに終わる。
#6“Awaken the Master”は相当にヘヴィなリフで始まるが、これ系のリフもよくやるので最早あまり新鮮味はない。
間奏パートはいつも通りテクニカルでDream Theaterらしいが、この曲もあまり印象に残るフレーズがないのが残念。
#7“A View from the Top of the World”は大仰なタイトルが印象的な表題曲にして20分越えの大作。
イントロから大仰に始まり期待させられる。
アップテンポのサビが結構カッコ良く、挑戦者を鼓舞するような歌詞も熱い。
2回目のサビの後は怒涛のテクニカルなソロの応酬に突入。
その後はギターのアルペジオでしっとりムードに。
ソロヴァイオリンも入ってくる。
その後の歌メロパートはバラード的展開で、ゆったりムードのままギターソロに入る。
ジョーダンの下降するピアノのフレーズで一旦曲が終わったような感じになるがこれで終わるはずもなく、疾走を再び開始しまたヘヴィなリフを繰り広げる。
そして再びソロの応酬へ。
16:26~のジョーダンのフレーズはクラシカルで、Dream Theaterとしてはかなり珍しいタイプのフレーズな気がする。
個人的に好みである。
最後はまた大仰な展開で締める。
壮大な曲で、プログレッシブメタルの先駆者たる誇りを刻み付けるかのような良曲だ。
総評
意外とヘヴィなリフが多い印象で、メタルらしいアルバムである。
いつものDream Theaterの引き出しで作られた印象で新鮮な部分はほぼないが、Dream Theaterが駄作を出すはずもなく、一定のクオリティはキープしている。
明らかにマンネリを感じアイディアが枯渇してきている感じがするが、才能のあるバンドなのでちゃんとしっかりとした一つの作品として仕上がっている作品ではある。
しかし歌メロの印象が過去最高に薄いので、かなり聴き込んで耳に馴染ませないと良さが分からないかもしれない。
一応サビが何処かは認識できるが、このメロディの弱さはどうにかならないのだろうか。
素晴らしい演奏、素晴らしいプロダクションの上に乗る平凡な歌メロ、そんな印象のアルバムだ。
何処を切っても紛れもないDream Theaterで、ファンなら十分楽しめる作品ではあるが、歌メロだけではなく印象に残るフレーズ自体が少なくなってきている印象だ。
今のバンドのメンバーの関係性はかなり良好なようで、ある意味ぬるま湯に浸かっている状態とも言える。
そんな安心感と快適感がバンドの音に出てしまっている気がする。
次回作ではプロデューサーを起用するなり何かしらの変化が欲しい所。
外部からの刺激が今のDream Theaterには必要なのではないだろうか。
点数
83点
お気に入り曲
The Alien、A View from the Top of the World
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