British Steel/Judas Priest[名盤レビューシリーズ③]

  


1980年4月14日発売


1. Rapid Fire
2. Metal Gods
3. Breaking the Law
4. Grinder
5. United
6. You Don’t Have to Be Old to Be Wise
7. Living After Midnight
8. The Rage
9. Steeler


この音楽は、これが「ヘヴィメタル」だ、という新しい方向性を示していた

イギリスの伝説的ヘヴィメタルバンドJudas Priestの6thアルバム。
デイヴ・ホーランドが加入しての初のアルバムで、元祖ヘヴィメタルとも言われている作品。

1980年当時、イギリスではヘヴィメタルの火が燃え上がりつつあった。
Iron MaidenやPraying Mantisなどの、若手バンド達によるムーブメントである。

既にそんなに若手ではなかったJudas Priestが先輩としての意地を見せつけ、新しい指標を示したのである。
実際このアルバムが当時の若手バンドに多大な影響を与えたことは間違いない。
そんな名作を今振り返る。

ちなみにアメリカ盤とそれ以外で曲順が多少違うが、後にリリースされたリマスターやアニバーサリーエディションではアメリカ盤以外の曲順で固定となっているので、そちらに準拠することとする。

楽曲レビュー

#1“Rapid Fire”はギターリフを中心として作られている、新しいJudas Priestの音楽の方向性を端的に示した曲。
執拗に繰り返されるリフ、硬質で突き進むようなドラム、中低音で歌うロブ・ハルフォード。

この音楽にはそれまでのJudas Priestが得意としてきた、ドラマティックな要素はない。
メロディアスでもなく叙情的でもない。

ここにあるのはただただ無骨な男らしさだけである。
これが「ヘヴィメタル」だ。

「メタルの神」というタイトルが凄い、ミドルテンポでどっしりとしたナンバーの2曲目に続く#3“Breaking the Law”は、シンプルで印象的なリフを持ったキャッチーさのある曲。
このリフは相当にインパクトがあり、この曲は彼らの最も有名な曲の一つと言える。

このアルバムの中では音が軽いが、こういうキャッチーな曲もアルバムには必要なのだ。
ミュージックビデオはメンバーが銀行強盗に扮するもので、コミカルな面を見せている。

相変わらずミドルテンポで男らしい無骨な#4“Grinder”に続く#5“United”は、キャッチーなバラードナンバー。
サビはポップで歌いやすいメロディとなっていて、平和的な雰囲気を醸し出している。

#6“You Don’t Have to Be Old to Be Wise”はアメリカンなリフが印象的な、カラッとしていてユルい雰囲気のナンバー。
どちらかというと次作、「Point of Entry」に入っていそうな曲だ。

#7“Living After Midnight”は当時一緒にツアーをしていて良く聴いていたという、AC/DCの影響が顕著なアメリカンなハードロックナンバー。
キャッチーで誰でも聴ける親しみやすさがあり、ライブではアンコールの定番曲となっている。
無骨な雰囲気のアルバムの中にもこういう曲がしれっと入っているのが、彼らの懐の深さを表している。

#8“The Rage”はレゲエ風のイントロが印象的な異色作。
常に実験精神を忘れない、彼ららしい曲とも言える。

#9“Steeler”はひたすらにリフで攻め続ける今作を象徴する一曲。
リフに始まり、リフに終わる。
ラストの執拗に繰り返されるリフは圧巻だ。

総評

ロブはほとんどハイトーンを使わないでミドルテンポ中心でどっしりと歌う。
硬質なドラムにリフに次ぐリフ。
それらが構築する世界は新鮮で、そして何処までも男らしい。
リフを中心に据えた、新しいJudas Priestのスタイルを提示したエポックメイキングなアルバムである。

今聴くとまだハードロックの要素も強く多少古く感じる部分もあるが、これがすべてのヘヴィメタルの基本となっているピュアなメタルなのである。

今の基準で考えると、このアルバムが出るまでヘヴィメタルという音楽は存在していなかったと言える。

The BeatlesのHelter Skelterが最初のヘヴィメタルだという意見もある。
だがあれは最初のハードロックではあるかもしれないが、ヘヴィメタルではないだろう。

Black Sabbathの1stが最初のヘヴィメタルだという意見もある。
しかしあのアルバムが提示していたのはホラー的な世界観であり、現在のヘヴィメタルの音とは相当に乖離している。

このアルバムを出すまではJudas Priest自身もヘヴィメタルバンドではなく、どちらかというとハードロックの延長という感じだった。
このアルバムでJudas Priestはヘヴィメタルバンドになった、というのが多くの人にとっての認識だろう。

ヘヴィメタルとはどういうものなのか、それを定義づけたアルバムである。
この音楽は、これが「ヘヴィメタル」だ、という新しい方向性を示していた。
それが重要なのである。

改めて聴き返してみて、Living After Midnightだけでなくこのアルバム全体がAC/DCの影響を受けているのではないかと思った。
当時Judas PriestはAC/DCの前座を務めてツアーをしていたので、影響を受けた可能性は大いにあるのだ。

このリフに次ぐリフ。
このスタイルはAC/DCからインスパイアされたものなのかもしれない。

点数

90点

お気に入り曲

Rapid Fire、Breaking the Law、United、Living After Midnight

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