2022年1月19日発売
1. The Rest Of The Sun Belongs To Me
2. For The Sake Of Revenge
3. A Little Less Understanding
4. Alone In Heaven
5. Tallulah
6. Don’t Say A Word
7. As If The World Wasn’t Ending
8. Paid In Full
9. Tonight I Dance Alone
10. The Wolves Die Young
11. Wolf & Raven
12. On The Faultline
元々こういう風にアレンジされるべきだったのではないかという曲も
Sonata Arctica初の既発曲アコースティックリアレンジアルバムである。
2019年にアコースティックツアーを行った彼らだが、その時のフィーリングが良かったことが本作を作るきっかけとなったようだ。
Sonata Arcticaも既にデビューから20年以上の長いキャリアを持ったバンドになっていて、発表したオリジナルスタジオアルバムは10枚にも及ぶ。
ここで一度過去を振り返り、再確認してみるのに丁度良いタイミングだったのだろう。
コロナの影響でしばらくツアーに出られなくなり、スタジオに入る時間が出来たことも大きかったと思われる。
Sonata Arcticaはメタルバンドの中でもメロディをとても大切にしているバンドなので、アコースティックアレンジにしてもそのフィーリングが失われることはないだろうというのは想像に難くないが、その内容はどうなっているのか。
楽曲レビュー
#1“The Rest Of The Sun Belongs To Me”は3rdアルバムWinterheart’s Guildの日本盤ボーナストラックだった曲である。
オリジナルは典型的なメロディックパワーメタルだったが、テンポをかなり落としアコースティックギターのオーガニックな音色が印象的な、メロディの良さがより引き立つようなアレンジになっている。
トニー・カッコの歌の表現力もダイレクトに伝わってくるし、この曲に関しては原曲のクオリティを遥かに超えていると思う。
原曲にあった間奏のテクニカルでヘヴィメタルらしいパートはカットされ、代わりに新しく作曲された間奏パートが加えられている。
この部分はちょっとオリエンタルな雰囲気があって、良いムードを醸し出している。
#2“For The Sake Of Revenge”はアコースティックギターによるシンプルなリアレンジ。
エレクトリックピアノやヴァイオリンも入っている。
これもトニー・カッコの歌のエモーションがより伝わってくるようなアレンジになっている。
雪原で撮影されたミュージックビデオも作られている。
↑ For The Sake Of Revengeのミュージックビデオ。
#3“A Little Less Understanding”はバンジョーがフィーチャーされたナンバー。
バンジョーの能天気な音色と、この曲が元来持っている牧歌的な雰囲気がマッチしている。
この曲もエレクトリックピアノが入っていて、エレクトリックアコースティックバージョンというような感じだ。
#4“Alone In Heaven”はテンポがあまり変わっておらず、原曲の雰囲気そのままにギターだけアコースティックギターにしたようなバージョンだ。
ドラムも普通に使われている。
元々こういう風にアレンジされるべきだったのではないかというほどの自然さがある。
原曲の良さがより引き立つような仕上がりになっている、素晴らしいリアレンジバージョンと言える。
#5“Tallulah”はSonata Arcticaの代表曲にして名曲の一つ。
原曲は勿論素晴らしいのだがちょっと淡泊な印象もあり、このバージョンはよりトニー・カッコのエモーショナルな歌唱が強調されていて出色の出来である。
原曲に比べてトニー・カッコの歌の上手さ、表現力が格段に上がっているのだ。
メロディも原曲と所々変わっていて、長年演奏してきたことによるこの曲の進化を感じ取ることが出来る。
ピアノも沁みるし、名曲がリアレンジで更なる名曲に生まれ変わったことがただただ嬉しい。
#6“Don’t Say A Word”はほぼ原曲通りのテンポによるアレンジ。
中盤のセリフは原曲ではトニー・カッコの通っていた学校の英語の先生であったニック・ヴァン・エークマンという人がやっていたが、今回はトニー・カッコ自身が担当。
トニー・カッコには演劇的な才能もあるようだ。
ギターソロはヘンリクのピアノソロに置き換わっていて、彼の流麗なプレイが聴ける。
展開自体も変わっていないので、案外と原曲とそう大きく印象は変わらない。
#7“As If The World Wasn’t Ending”は6thアルバムThe Days of Graysに入っていたバラード曲だが、元々アコースティックっぽい所があったのでこれもそんなに印象は変わらない。
ドラムも入っているし、ディストーションギターがなくなっただけぐらいの印象である。
#8“Paid In Full”はカントリー風のリズムを取り入れた軽快なアレンジが印象的。
これも原曲の良さが引き立つような仕上がりになっている。
#9“Tonight I Dance Alone”は7thアルバムStones Grow Her Nameのヨーロッパとアメリカ盤のボーナストラックだった曲なので、日本人には馴染みが薄いかもしれない。
原曲がバラードなので、これも大きな印象の違いはない。
#10“The Wolves Die Young”はテンポはあまり変わっていないが、Aメロの歌メロがオクターブ下になっているのが大きな変更点か。
サビでは通常のキーに戻る。
ヘンリクのピアノソロが美しく見事なのが聴き所と言える。
そもそも原曲が良い曲なので、アコースティックにしても素晴らしさは変わらない。
#11“Wolf & Raven”はSonata Arcticaの大人気パワーメタルナンバー。
テンポは原曲とほとんど変わっておらず、あまりにも早すぎるピアノに笑ってしまう。
名曲はアコースティックアレンジにしても名曲で、テンポを落とさずにやったのは大正解である。
あまりにも早いピアノリフの部分は正確に合うようにかなり練習したらしい。
歌メロはオクターブ下になっているが、そもそも原曲のキーは高すぎてトニー・カッコは嫌いらしい。
この曲は2ndアルバムSilenceがリマスターされた時のボーナストラックとしてもリアレンジされていたので、リアレンジされるのはこれで2回目になるはずだ。
#12“On The Faultline”。
これも元々アコースティックみたいなものだったので大きな印象の違いはない。
非常にしっとりとしたムードの穏やかな曲なので、アルバムのラストにはぴったりと言える。
総評
典型的なパワーメタルバンドとは一線を画す、彼らの楽曲のメロディの良さ、独特さを再確認出来る仕上がりになっている。
トニー・カッコの天才的なメロディセンスがどの楽曲にも息づいていて、正にフィンランドの叙情が感じられる美しいアルバムだ。
トニー・カッコの歌の表現力がより強調されているし、ヘンリクが素晴らしいピアノ、キーボードプレイヤーだということもこのアルバムを聴くとよく分かる。
Sonata Arcticaの珠玉の楽曲を新解釈で聴ける、ファンにはひたすら楽しいアルバムだ。
元々こういう風にアレンジされるべきだったのではないかという曲すらあり、既発曲に新たな命を与えたこの企画の意義は大きい。
バンドにとっても過去を振り返り昔の楽曲を再訪することで得るものがあっただろうし、既発曲の新解釈バージョンを聴けるのは長年聴いてきたファンにとっても嬉しいものである。
このアルバムの続編であるAcoustic AdventuresのVolume Twoは2022年の10月に発売予定で、そちらを聴くのも今から楽しみである。
BURRN!のインタビューでトニー・カッコは現時点での最新スタジオアルバムTalviyöは大人しすぎたので、次回作では本来のSonata Arcticaの道に戻る、スピーディーでヘヴィなメタルをやる、というようなことを言っていたので、次のオリジナルアルバムも楽しみである。
アコースティックも良いが、やはりSonata Arcticaはヘヴィメタル(パワーメタル)をやるべきだと筆者は思う。
今回のアコースティックリアレンジ企画でヘヴィメタルに餓え、その気持ちを新作に爆発させてくれることを期待したい。
点数
86点
お気に入り曲
The Rest Of The Sun Belongs To Me, A Little Less Understanding, Alone In Heaven, Tallulah, Wolf & Raven
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