1. Against the Wind
2. Distant Skies
3. Galaxies
4. Winter
5. Stratovarius
6. Lord of the Wasteland
7. 030366
8. Nightfall
9. We Hold the Key
10. Twilight Symphony
11. Call of the Wilderness (instrumental)
良い曲とそうでない曲の差が激しい過渡期のアルバム
フィンランドのパワーメタルバンドStratovariusの4thアルバム。
ティモ・コティペルトをボーカルに迎え入れての初のアルバムで、アンティ・イコーネンとトゥオモ・ラッシーラが参加している最後のアルバムでもある。
このアルバムから音質も向上しアレンジも洗練され始め、バンドとして一皮向ける直前の時期のアルバムと言える。
明らかにこれまでのレベルとは次元の違うハイクオリティな楽曲を収録しながらも、パッとしない曲も多いというアンバランスなアルバムという印象だ。
このアルバムにはいくつかのキラーチューンが収録されている。
具体的に言うと冒頭の3曲と#10“Twilight Symphony”である。
楽曲レビュー
高揚感のあるサビを持ったパワーメタルナンバー#1“Against the Wind”、キャッチーで飛行機が怖いと歌う歌詞が面白いアップテンポナンバー#2“Distant Skies”、スペイシーなキーボードの使い方とリズムがThe Final Countdownを想起させるミドルテンポ曲#3“Galaxies”までのキラーチューン3連発の流れが素晴らしい。
完璧である。
ここまで聴いた当時のStratovariusファンはガッツポーズしたに違いない。
この3曲で彼らのやりたい方向性が完全に定まったと感じさせられる。
特に#3“Galaxies”が素晴らしく、強烈にキャッチーなサビを持った名曲だ。
ポップさも感じさせる普遍的魅力の溢れた曲である。
個人的にStratovariusのミドルテンポナンバーでは最高傑作だと思う。
そしてこのアルバムの後半に収録されているキラーチューンが#10“Twilight Symphony”である。
所謂ネオクラシカルなエレメンツを多分に含んだミドルテンポナンバーで、非常に美しい曲である。
ティモ・トルキはこのアルバムから露骨にネオクラシカル方面からの影響を取り入れ始めた印象だ。
間奏で突如現れるヴァイオリンによるクラシカルなパートも露骨なのだが、やはり好き者にはたまらない。
10曲目という立ち位置的にもこのアルバムのキモとなっている楽曲だ。
そんな神曲が収録されているこのアルバムであるが、他の曲に注目してみると意外とパッとしない。
勿論冬の過酷さを感じさせるバラード#4“Winter”、北欧の叙情を感じさせるバラード#8“Nightfall”なども悪くはないのだが、どうも無駄に長い曲が多く冗長な感じがするのだ。
#7“030366”もつまらない曲の一つだが、切り口は少し面白い。
無機質なコンピュータの雰囲気を感じさせる異色曲である。
実験的な音使いから、ティモ・トルキの音楽性を切り広げたいという野心が感じられる。
ギターはちょっとインダストリアルメタル的でさえある。
総評
Stratovariusの音楽の方向性の型が出来上がったアルバムと見て良いだろう。
そして新加入のティモ・コティペルトは線の細い儚げな声質を持っていて、この北欧的な叙情パワーメタルを表現するのにピッタリの逸材である。
彼の加入によりバンドの音楽がレベルアップし、メジャー感が増したことは音を聴くとはっきりと分かる。
メジャー感は増しつつも北欧の風景を想起させる叙情性はそのままで、バラードの#4、#8などはこのバンドの個性をはっきりと示している。
そして彼らのアルバムで初めてベースがはっきり聴こえるのも、ヤリのファンには嬉しい所だろう(バキバキしていて気持ち良い)。
このアルバムの問題点は頭3曲の良さが際立っているものの、その後冗長な曲が多くダレることだろう。
前作と違い良い曲とダメな曲の差が大きすぎるのだ。
特筆すべき曲がいくつか収録されているので聴く価値のあるアルバムだが、アルバムとしての完成度は決してまだまだ高くない。
Stratovariusがメジャーへの階段を登り始めた、そんなアルバムだ。
点数
83点
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