Orden Oganの新作「Final Days」レビュー

  


2021年3月12日発売


1. Heart of the Android
2. In the Dawn of the AI
3. Inferno
4. Let the Fire Rain
5. Interstellar
6. Alone in the Dark
7. Black Hole
8. Absolution for Our Final Days
9. Hollow
10. It Is Over


今現在のドイツのメタルシーンを知る上で、必ず聴くべきバンドの一つ

ドイツのパワーメタルバンドOrden Oganの7thアルバム。
ダークなSFがテーマのコンセプトアルバムとなっている。

このコンセプトのアイディアはファンが冗談で「西部劇の次は宇宙に行くしかないんじゃないですか?」と言ったことからスタートしたらしい。

当初アルバムは2020年の8月に発売予定だったが、パンデミックの影響ではなくアルバム制作中に問題がたくさん起こったことが原因で、2021年の3月へと発売日が延期されている。

発売されたこのアルバムはドイツの総合チャートで3位を記録していて、かなりの人気バンドだということが窺える。
その内容はどうなっているのか。

楽曲レビュー

#1“Heart of the Android”はキャッチーなコーラスを持ったナンバーで、パワーメタルバンド特有の芋臭さの全くない、洗練されたサウンドを1曲目から鳴らしている。
しっかりとアップデートされた、かなりイマドキなパワーメタルサウンドと言える。

シリアスな世界観で、初っ端からOrden Oganの世界へと引き込んでいく。
Heart of the Androidというタイトル通りアンドロイドの心について歌っているのではなく、心が機能しなくなった人間について歌っている。

#2“In the Dawn of the AI”はAIの人類乗っ取りについて歌っている、これまたキャッチーなコーラスを持ったスケール感のある佳曲。

デジタルなSEを導入して、SF感を強調している。
キャッチーなメロディだがリフはシリアスで、メタルらしさをしっかりと保っている。

#3“Inferno”もミドルテンポでサビがキャッチーなナンバー。
キャッチーだが無機質さも感じるのは、SFをテーマにしているからか。
これも洗練されていて、アメリカのメインストリーム音楽のようなモダンさすら感じる。

#4“Let the Fire Rain”は壮大な雰囲気のサビが印象的な、このアルバムのキラーチューン。
リフが彼らの曲にしてはシンプルで聴きやすい。

このスケール感は並みのパワーメタルバンドに出せるものではなく、彼らが突出したバンドであるということを象徴している。
間奏でのライブではシンガロング必死のコーラスパートも強力。

#5“Interstellar”は諦めなければ負けることはない、という強いメッセージが印象的な彼らにしてはテンポの速いナンバー。
と言ってもメロスピっぽいわけではなく、あくまでヘヴィでゴリゴリ。
サビのメロディはちょっとヨーロッパの民謡調。

#6“Alone in the Dark”はこのアルバム唯一のバラード。
甘いバラードではなく、シリアスで壮大なバラード。

ストリングスがハリウッドSF映画ばりの編曲で作り込まれていて、メジャー感が凄い。
Brothers of Metalのイルヴァ・エリクソンがボーカルでゲスト参加している。

#7“Black Hole”はヘヴィでモダンなリフで始まる、アップテンポのナンバー。
実際のブラックホールについて歌っているのではなく、人が精神的に重圧で潰される様子を描いている。

#8“Absolution for Our Final Days”は無機質なサビのメロディが印象的な、ミドルテンポのナンバー。
ひたすら壮大なアレンジで重厚に聴かせる。

#9“Hollow”はSymphony XかというヘヴィでシンフォニックなSF的世界観を醸し出すイントロが印象的な曲。
ツーバス疾走系だが軽さはなく、あくまでヘヴィ。
マイナー調のダークなサビがカッコいい。

ラストを飾る#10“It Is Over”はピアノで始まる、壮大な雰囲気のミドルテンポナンバー。
映画インターステラーを彷彿とさせる語りが入っていて、SF的ムード作りが徹底している。

総評

今ヨーロッパで流行りのミドルテンポでキャッチーさを売りにした、PowerwolfやSabatonタイプのパワーメタルで、前半にいい曲が固まっている気がするがいいアルバムだ。

個人的には優等生すぎて面白みに欠けるきらいがあるが、質は高いので認めざるを得ないという感じ。

すべてが基本に忠実に作られていて、ある意味売れるパワーメタルを作ろうとする商業主義のようにも感じた。
彼らはこのバンドで食っていきたいという思いが強いのではないだろうか(別にそれは悪いことではないと思う)。

ドイツ人らしいカッチリとしたリズムで、真面目に作られている印象の強いアルバムだ。
そしてシンフォニックでデジタルなアレンジによって、テーマであるSF的な世界観を見事に作り上げている。

今現在のドイツのメタルシーンを知る上で、必ず聴くべきバンドの一つである。
西部劇、SFの世界の次は何処へ彼らは向かうのであろうか?

点数

85点

お気に入り曲

Heart of the Android、In the Dawn of the AI、Let the Fire Rain

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