[レビュー]Crazy Lixx – Street Lethal[新作]

  


2021年11月5日発売


1. Enter The Dojo
2. Rise Above
3. Anthem For America
4. The Power
5. Reach Out
6. Final Fury
7. Street Lethal
8. Caught Between The Rock N’ Roll
9. In The Middle Of Nothing
10. One Fire – One Goal
11. Thief In The Night


ワイルドでラフになりつつも、聴いていて耳障りが良いのがポイント

最近ではシェイ・ケインという女性シンガーをプロデュースするなど多彩な活躍を見せている、ダニー・レクソン(ボーカル)率いるスウェーデンのグラムメタルバンドCrazy Lixxの7thアルバム。
前作Forever Wildに伴うツアー中に残りのショウがパンデミックの影響でキャンセルになり、レーベルからの要請で作ることになったアルバムだという。

架空の90年代の映画Final Furyのサウンドトラックということを想像して作ったアルバムのようで、そのことはライナーノーツにも書いてある。
それによりリスナーもアルバムを作ったバンドと同じマインドセットでアルバムを聴くことが出来るという作りになっている。

80’sライクなサウンドとファッションで人気上昇中のバンドで、2019年には初来日公演も行っている。
約2年半ぶりの新作はどうなっているのか。

楽曲レビュー

#1“Enter The Dojo”はバンドサウンドではなく映画的で、アジアンテイストのあるインスト曲。
キラキラキーボードとフルートのような音色でサウンドスケープが構築されている。

#2“Rise Above”は軽快なテンポに熱い歌メロディが乗るロックンロールナンバー。
Final Fury(このアルバムのコンセプトとなる架空映画)というワードも使われていて、映画の主題歌といった所か。
フラッシーなギターソロもあり華やかで、Crazy Lixxのトレードマーク的サウンドが展開されている。

#3“Anthem For America”はミドルテンポでスケール感のある名曲である。
北欧的なメロディアスさより、アメリカンロックからの影響が強い曲だ。
この曲にはアメリカが現代失ったものへの憧れが映し出されている。

歌詞には「1993年あたりに誰かがプラグを抜いた、それは同じではなくなった」とある。
これはグラムメタルの時代が終わり、グランジ、オルタナティブロックの時代が始まったことを意味しているのではないかと思われる。

ダニー・レクソンはスウェーデンにいながらアメリカの文化に多大な影響を受けてきたようで、アメリカの往年の音楽、映画、漫画に傾倒している。
アメリカへの愛がこの曲には映し出されているのだ。

懐古的とも言えるが、彼らのアメリカ愛、エイティーズ愛は本物であり、本作において最も重要な曲と言えるだろう。

Crazy Lixx – "Anthem For America" (Official Music Video)

↑ アメリカリスペクトが徹底しているAnthem For Americaのミュージックビデオ。

#4“The Power”はゴージャスなコーラスワークがDef Leppardからの影響を感じさせる、アリーナロックの香りを醸し出すミドルテンポ曲。
リズムはQueenのWe Will Rock You のような感じだ。
「君なら出来る、その力を君は持っている」というメッセージの、普遍的な歌詞となっている。

#5“Reach Out”はメロディアスなハードポップ寄りの曲。
キャッチーなサビを伴って駆け抜ける爽快なナンバーである。
こういう曲はいかにも北欧のバンドらしい。

#6“Final Fury”はインスト曲。
こちらは#1と違いバンドサウンドで、架空映画Final Furyの挿入曲といった所か。

#7“Street Lethal”はワイルドテイストのあるロックンロールで、Skid Rowの影響を感じさせる。

#8“Caught Between The Rock N’ Roll”は土臭い、ブルージーなフィーリングのあるイントロを持ったミドルテンポのナンバー。
この曲もアリーナロック的であり、往年のメジャーグラムメタルバンドを彷彿とさせる。
テーマはロックンロール病について。

#9“In The Middle Of Nothing”はEuropeなどの北欧メタル/ハードロックからの影響を強く感じさせるラブバラード。
往年のバラードの名曲と比べても遜色のない出来で、これもスケール感が半端ではない。
高音キーボードサウンドと巧みなコーラスワークが光る、ハードポップの名曲である。

#10“One Fire – One Goal”はメロディアスでアップテンポなナンバー。
人生においてチャンスがあったら逃すなという、強いメッセージが込められている。

#11“Thief In The Night”はシリアスなイントロで始まるミドルテンポのナンバー。
マイナーなメロディとキラキラキーボードが、北欧的な清涼感を醸し出している。

総評

グラムメタル勃興の地、アメリカへの憧憬をサウンドや歌詞に映し出しつつ、北欧らしい清涼感、メロディアスさも内包したCrazy Lixxらしいアルバムである。

今回はよりスタジアムロック的な音に近づいていて、最早風格すら漂う。
コーラスが念入りに重ねられていてゴージャスなのである。
スケール感という武器を手に入れた彼らの新たな、そして大きな一歩がここに刻まれている。

そしてあくまで良いメロディが楽曲の主軸となっていて、ワイルドでラフになりつつも聴いていて耳障りが良いのがポイントである。

他の中堅グラムメタルバンドより一歩抜きん出た感のある充実作で、その徹底された音作り、ソングライティングのレベルの高さに感心するばかりである。

このアルバムにより彼らの人気が更に加速することは間違いない。

点数

87点

お気に入り曲

Rise Above, Anthem For America, In The Middle Of Nothing

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