最近聴いた新譜をまとめて簡単にレビューしてみる。
9月によく聴いていた5枚である。
Petit Brabancon – Fetish
2022年8月31日発売
DIR EN GREYの京とL’Arc〜en〜Cielのyukihiroを中心に結成されたニューバンドのデビューアルバム。
楽曲の多くはMUCCのミヤが手掛けていて、方向性もミヤに引っ張られている。
DIR EN GREYが洋楽に影響を受け始めた頃のような、ちょっと懐かしのニューメタル路線になっている。
楽曲は類型的であまり面白くなく、豪華メンバーからなるスーパーバンドだけにちょっとがっかり。
京の声ならなんでもいいという人や、MUCCが好きなら聴いてみても良いのではないだろうか。
yukihiroの楽曲は1曲だけ入っているが、ラルクや彼のソロプロジェクト、acid androidでもやれそうないかにもなyukihiroのバラード曲で、このアルバムの良いアクセントになっている。
The Halo Effect – Days of the Lost
2022年8月12日発売
スウェーデンのメロディックデスメタルバンドIn Flamesのメンバーであったイエスパー・ストロムブラード(G)とニクラス・エンゲリン(G)、Dark Tranquillityの現ボーカルであるミカエル・スタンネを中心に結成されたバンド。
今のIn Flamesにはない、モダン化する前の初期のメロデスをやるべく結成されたバンドのようで、こういう音を望んでいた人も多いのではないか。
しかし初期In Flamesよりも暴虐性はより薄くなっており、普通に歌メロを歌う場面もあったりと妙に聴きやすい。
適度にモダンなテイストもあり、完全に過去を再現するということにはなっていない。
楽曲のクオリティは相当に良く、どの曲にも流麗なツインギターによる印象的なメロディラインが刻まれている。
ワンパターンになりがちなメロデスなのに楽曲の幅が広いのも凄く、アルバムを通しての緩急もバッチリ。
この音楽をやる喜びが音から溢れ出てくる至高の一枚。
最初にシングルとして切られた1曲目のShadowmindsは、このバンドのスケール感を示したキャッチーな名曲。
Blind Guardian – The God Machine
2022年9月2日発売
なんと7年振りとなるBlind Guardianの新作。
最近はオーケストラに寄りすぎて重厚になりすぎていたが、この新作では初期の匂いのあるスピーディーでギターオリエンテッドな作風に回帰。
しかも普通に楽曲のフックがあるから素晴らしい。
勿論普通のパワーメタルバンドに比べたらクワイヤはめちゃくちゃ分厚いし、オーケストラもたくさん使われていて十分に重厚な音楽だ。
コロナもあって制作時間はたくさんあったようで、それによってあまり良くないパートを削ったりして曲のブラッシュアップが出来たらしい。
だから無駄のない、フックのある分かりやすいパワーメタルアルバムに仕上がったという側面もあるのだろう。
パワーメタルの王者ここにあり、の風格漂う1枚。
Sigh – Shiki
2022年8月26日発売
日本のブラックメタルバンドSighの12thアルバム。
ギターとベースの録音を元DragonForce、現Kreatorのフレデリク・ルクレール、ドラムの録音をFear Factoryのマイク・ヘラーに頼み完成させたアルバム。
Shikiのメインの意味は四季と死期らしく、齢50を超えた川嶋未来(ボーカル)の死への恐怖が日本語でストレートに表現されているのが特徴だ。
普通に歌詞を見ないで聴いていても聞き取れるほどはっきりと歌っていて、感情がストレートに伝わってくる。
川嶋のデス声が今回かなり地声寄りなのもそれに拍車をかけている。
富士山に桜と究極に和風なアートワークだが、音のほうはそこまで和風ではなく、ギターオリエンテッドなヘヴィメタルらしい音像になっている。
Sighのアルバムとしては分かりやすいストレートな作風だが、アバンギャルドな要素も忘れてはいない。
殺意〜夏至のあとのラストのセリフ、「春に今が春であることを知るものはいない~」の部分は季節を人生に例えていると思われる。
このセリフが妙に印象に残ったし、考えさせられた。
誰もが知っているが、その時(死)は誰にも平等にやってくるのである。
遅いか早いかだけの違いしかないのだ。
人が死ぬという現実をまざまざと見せつけられる、ある意味問題作。
Five Finger Death Punch – AfterLife
2022年8月19日発売
コンスタントにクオリティの高いアルバムをリリースし続けるヘヴィメタルモンスターFive Finger Death Punchの9thアルバム。
毎回凄いが、今回は特に凄いアルバムに仕上がっている。
全体をマイナーな雰囲気が支配していて今までのアルバムよりも重く、悲しい雰囲気なのが特徴だ。
攻撃的な面は今まで通り健在だが、今回はバラードのクオリティも突出している。
Times Like Theseは新たな彼らの名曲とも言える出来で、ここまで普遍的なバラードを書けるヘヴィメタルバンドは彼等か、Avenged Sevenfoldくらいだろう。
フックに満ちたサビを持ったタイトルトラックも、彼等の新しいアンセムになりそうだ。
新基軸はJudgement Dayで、ラップメタルな雰囲気とインド風のメロディが邂逅した独特の雰囲気を醸し出している。
楽曲の幅広さ、静と動の緩急の幅は過去最高で、ここに来て決定盤と言える傑作を作り出した彼らに賛辞を送りたい。
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