Painkiller/Judas Priest[名盤レビューシリーズ④]

  


1990年9月3日発売


1. Painkiller
2. Hell Patrol
3. All Guns Blazing
4. Leather Rebel
5. Metal Meltdown
6. Night Crawler
7. Between the Hammer & the Anvil
8. A Touch of Evil
9. Battle Hymn (instrumental)
10. One Shot at Glory


当時勢いに乗っていたスラッシュメタルに影響を受けていた

イギリスの伝説的ヘヴィメタルバンドJudas Priestの12thアルバム。
ドラムのスコット・トラヴィスが加入しての初の作品で、プロデュースは2ndアルバムSad Wings of Destinyでアシスタント・エンジニアを担当していた、クリス・タンガリーディス。
「メタルの聖典」とも言われているこの名作を今振り返る。

楽曲レビュー

#1“Painkiller”は新加入のスコット・トラヴィスの激烈なドラムで始まる、超強力なメタルアンセム。
刻み続けるダブルベースドラム、スウィープを取り入れたフラッシーなギター、常にヒステリックなロブのシャウトが織り成す世界は超アグレッシブ。
この1曲がこのアルバム全体を象徴しているとも言える。

まるで怒りさえ感じる程のアグレッション。
ギターリフを中心として構成された硬派なスタイルでもあり、ある意味1990年版Rapid Fireとも言えるかもしれない。

#2“Hell Patrol”は強烈なインパクトのある三連符のナンバー。
これもアグレッシブだがメロディアスさもあり、大英帝国の気品漂う。
ギターソロもメロディアスだ。

ロブの奇声で始まり、リフで押していく硬派な#3“All Guns Blazing”に続く#4“Leather Rebel”は、ダブルベースドラムが強烈なアグレッションを放つ、典型的なこのアルバムの曲。
緊迫感のあるイントロも素晴らしい。

#5“Metal Meltdown”はスウィープを取り入れたイントロのギターソロが印象的なナンバー。
この曲もアグレッシブであり、強烈なリフのインパクトが曲を引っ張っていく。
ロブも凄いハイトーンでシャウトしていて、緊張感が凄い。

ここからLPだとB面になり、雰囲気が変わっていく。
#6“Night Crawler”は妖しいSEで始まる、ギターリフが超印象的なメロディアスなナンバー。

これもブリティッシュらしい気品を漂わせていて、名曲だ。
この曲あたりからSad Wings of Destinyの頃のようなエッセンスが感じられる叙情的なムードが入ってくる。

#7“Between the Hammer & the Anvil”もギターリフが印象的なナンバー。
このリフはクールだ。
ギターソロがそれまでのJudas Priestの基準で考えると、かなりハイレベルだということが分かるだろう。

#8“A Touch of Evil”はこのアルバム唯一のバラード。
と言ってもちゃんとリフがあるし甘い感じではない。

硬派な、イギリスのバンドらしいバラードだ。
結構メロディがしっかりしている。

ドラマティックな短いインスト曲#9“Battle Hymn”に続く#10“One Shot at Glory”は、このアルバムのラストを飾るザ・正統派なリフを持った佳曲。
王道な楽曲で、従来のJudas Priestらしい曲と言える。

総評

1980年のBritish Steelで自らをメタルゴッドと称し、聖典を作り上げたJudas Priestが、10年の時を経て提示して見せた新たな聖典。
当時勢いに乗っていたスラッシュメタルに影響を受けて、ここに来てエクストリームさを増しているから凄い。
当時メンバーはTestamentをよく聴いていたらしい。

ここまでエスクトリームにするとそれ相応の技術も必要になるが、グレン・ティプトンは技術の向上のためギター教室に通ったというからこれもまた凄い。
この向上心があるからJudas Priestは偉大なバンドになれたのだろうと思う。

その成果はこのアルバムの所々に入っているフラッシーなギターソロで聴くことが出来る。
それまでのJudas Priestを知っているものなら、どれだけこのアルバムのソロがハイレベルになっているか感じることが出来るだろう。

そして凄腕ドラマーのスコット・トラヴィスを獲得したことで、今まで出来なかった高速ダブルベースドラムを使った曲が出来るようなったのは大きな変化だ。
(今思えば前作Ram It Downのドラムの音は酷すぎないだろうか?)
新加入のスコットの技術とグレンの練習の成果により、この強烈なアグレッションを放つサウンドを構築することが出来たのだ。

勿論ロブのヒステリックなハイトーンも、そのエスクトリームな世界観を構築するのに貢献している。
このアルバムでのロブの歌唱は驚異的で、スクリーマーとしての本領発揮といった所だ。

このアグレッションが何処から来ているのかと考えた時、PRMCに訴えられていてフラストレーションが溜まっていたというのも、要因の一つとしてあったのかもしれないとも思う。

当時Judas PriestはPRMCからヘヴィメタルは青少年に悪影響を与える、として訴えられていたのだ。
もしそうだとしたら怒りは良い方向に作用していたということで、PRMCにありがとうと言いたい。

全10曲。
捨て曲が1曲もないアルバムである。
LPで言う所のA面には新しい、エクストリームな面をフィーチャーした楽曲が並び、B面には従来のJudas Priestらしい叙情性を持ったメロディアスな楽曲が並ぶアルバム構成も面白い。

昔のJudas Pristと、新しいJudas Priestの邂逅である。
このことがこのアルバムをスペシャルなものにしている、一つの要因である。

Judas Priestのアルバムはどれも、ちゃんとその時代に合わせてアップデートされているから凄い。
当時既にオジさんになりつつあった彼らが、ここに来てこんなアグレッシブなアルバムを作ると誰が思うか。

British SteelがJudas Priestのサウンドを確立させたアルバムだとしたら、このPainkillerはJudas Priestのサウンドを完成させたアルバムと言えるだろう。
現時点での最新作Firepowerも、このアルバムで作り上げた音楽性が基軸となっていると感じる。

このアルバムに伴うツアーの後、ロブ・ハルフォードはバンドを去ることになる。

点数

94点

お気に入り曲

すべて良いが特にPainkiller、Hell Patrol、Night Crawler。

コメント

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