Timo Tolkki’s Avalon – The Land of New Hope[2013][旧作レビュー]

  


1. Avalanche Anthem
2. A World Without Us
3. Enshrined in My Memory
4. In the Name of the Rose
5. We Will Find a Way
6. Shine
7. The Magic of the Night
8. To the Edge of the World
9. I’ll Sing You Home
10. The Land of New Hope


元Stratovariusのティモ・トルキによるメタルオペラプロジェクト第一弾

元Stratovariusのギタリスト、ティモ・トルキがFrontiers Recordsのオーナー、セラフィノ・ペルジーノからロックオペラプロジェクト制作の提案を受けて賛同し、スタートしたプロジェクトがこのTimo Tolkki’s Avalonである。
アルバム全体にストーリーがあり、基本的に個々の楽曲はストーリーの1シーンを語っている。
このアルバムにはメタル界から様々なシンガーがゲスト参加している。

基本的にメインで歌っているのがエリーゼ・リード(Amaranthe)とロブ・ロック(Impellitteri)。
その他に参加しているのがラッセル・アレン(Symphony X)、シャロン・デン・アデル(Within Temptation)、マイケル・キスク(元Helloween,Unisonic)、トニー・カッコ(Sonata Arctica)と、パワーメタルファンなら十分に豪華と思えるメンバーが参加している。

シンガー以外も豪華で、ドラムにはアレックス・ホロツヴァース(元Rhapsody of Fire)、キーボードにはイェンス・ヨハンソン(Stratovarius)、デレク・シュリニアン(元Dream Theater,Sons of Apollo)、ミッコ・ハルキン(元Sonata Arctica)が参加している。
このことからやはりティモ・トルキが他の同業のメタルミュージシャンからも一目置かれていることが分かる。
ギターとベースはティモ・トルキ本人が手掛けているようだ。
このアルバムはAvalonプロジェクトの第1章となっていて、2014年のAngels of the Apocalypse、2019年のReturn To Edenと合わせて三部作となっている。

肝心の物語だが、「西暦2055年、地球上の大半の国、地域は大地震に伴う津波や火災によって壊滅状態となり、人類は滅亡寸前になった。生き残った少数の人類は新たな生活の場として、聖なる島と呼ばれ、純粋で正直な心の持ち主しか受け入れないという伝説の地「The Land Of New Hope」を探し求める旅に出発する」ということらしい。
目新しいストーリーではないが、ティモ・トルキがこのようにコンセプトを決めてアルバムを作った場合どうなるのか。
結論から言うとこのアルバムは強力なパワーメタルアルバムに仕上がっている。

楽曲レビュー

1曲目のAvalanche Anthemは確かにメタルオペラっぽい雰囲気のある曲でまぁまぁだが、2曲目のA World Without Usが強力だ。
ティモ・トルキらしいキャッチーなパワーメタルソングで、シンガーはエリーゼ、ロブ、ラッセルの3人だが、ラッセルの歌唱が際立っている。
この希望的なメロディをハスキーボイスで声量豊かに伸びやかに歌い上げていて、本当に素晴らしいシンガーだと再確認した。
ティモ・トルキとラッセル・アレン。
意外と新鮮な組み合わせだが、まさかのマジックがここで炸裂している。
歌詞は滅びた後の地球で人類が新しい地を目指すことが語られている。

3曲目のEnshrined in My Memoryはエリーゼをフィーチャーしたミドルテンポだが、これも中々キャッチーな佳曲に仕上がっている。
エリーゼの歌唱も強力で、ティモ・トルキの曲との相性もバッチリだ。
この曲はミュージックビデオにもなっている。

儚げな雰囲気のバラードIn the Name of the Roseで一休みした後の5曲目We Will Find a Wayがこれまた素晴らしい。
正にティモ・トルキにしか作れない爽快なパワーメタルソングで、ファンが求めている曲は正にこれだよという曲だ。
ロブ・ロックとトニー・カッコがボーカルを分け合って歌っていて、どちらも伸びやかに歌っていて気持ち良い。

6曲目のShineは女性シンガー2人(エリーゼとシャロン)によるキャッチーなミドルテンポ曲。
この曲も2人の声の良さが活かされていて、中々に素晴らしい。

7曲目のThe Magic of the Nightもパワーメタル系の曲で悪くない。
ロブ・ロックが歌唱しているが彼の歌声は少し一本調子で無骨な感じなので、あまりトルキの曲にはフィットしていない感じもある。
ラッセル・アレンと似たようなタイプのシンガーにも思えるがラッセルはフィットしていたので、音楽とは不思議なものだ。

8曲目のTo the Edge of the Worldもキャッチーで素晴らしいパワーメタルソング。
本当にこのアルバムは良い曲が多い。
キーボードソロをイェンス・ヨハンソンとデレク・シュレニアンが弾いているのがポイントか。

9曲目のI’ll Sing You Homeはエリゼをフィーチャーしたバラード。
哀愁漂う典型的なトルキバラードで、中々良い。

そして10曲目のThe Land of New Hopeが素晴らしい。
アルバムの最後を飾る希望と優しさに溢れた名曲である。
この曲を名曲たらしめているのが、この曲の歌唱を担当しているマイケル・キスクである。
彼の美しいハイトーンボイスをたっぷり堪能することが出来る。
本当に彼の声は美しく、癒しのフィーリングを持っていて、いつまでも聴いていられる魅力がある。
メタルシンガーとしては珍しいタイプだろう。

彼の魅力が最大限に活かされた楽曲となっている。
壮大でプログレッシブな大作ということ、メロディやアレンジ、マイケル・キスクが歌っているということも含めて、何処かあのHelloweenの名曲Keeper of the Seven Keysを彷彿とさせる曲だ。
ティモ・トルキは明らかに意識しているだろう。
歌詞は遂に辿り着いたThe Land of New Hopeについて歌っている。

総評

このアルバムはティモ・トルキの歴史的に見てもかなり強力なパワーメタルソングが収録されているアルバムだ。
彼のあまり得意としていない(と個人的に思っている)ミドルテンポの曲(Enshrined in My Memory)が良いのが大きく、アルバム全体でダレる部分がない。
今回コンセプト的に壮大でシンフォニックな要素を含んでいるが、ティモ・トルキの曲作りの根幹は全く変わっていなく、キャッチーでシンプルなパワーメタルといういつものティモ・トルキの音楽が展開されている。
やはりこの人はこういう音楽しか作れないのだろう。

アレンジがシンプルすぎるとか突っ込める部分はあると思うが、よくこんなキャッチーなメロディを量産できるなと心底思う。
ティモ・トルキの作るアルバムには大体いつも微妙な曲も数曲入っているのだが、このアルバムに関しては捨て曲がない。
メロディの充実度で言ったら全盛期のStratovariusに匹敵する出来である。
溢れ出るメロディのアイディアに敬意を表してこの点数で。

ちなみにプロジェクト名のAvalonはアーサー王物語に登場する楽園とされる聖なる島の名前から取っている。

点数

90点

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