Stratovarius – Dreamspace[オリジナルアルバム全レビューシリーズPart1-3]

  


1. Chasing Shadows
2. 4th Reich
3. Eyes of the World
4. Hold on to Your Dream
5. Magic Carpet Ride
6. We Are the Future
7. Tears of Ice
8. Dreamspace
9. Reign of Terror
10. Thin Ice
11. Atlantis
12. Abyss
13. Shattered
14. Wings of Tomorrow


陰鬱なティモ・トルキの内省世界が展開される初期の集大成的作品

フィンランドのパワーメタルバンドStratovariusの3rdアルバム。
15曲収録(日本盤ボーナストラック含めて)と過去最大のボリュームで贈る初期(ティモ・トルキボーカル時代)の集大成的アルバムである。
そしてベーシストのヤリ・カイヌライネンが加入してから初のアルバムとなる。

楽曲レビュー

クールなリフとキャッチーなサビを持ったパワーメタルソング#1“Chasing Shadows”で掴みはバッチリだ。

大仰な雰囲気の#2“4th Reich”に続く#3“Eyes of the World”はQueensrÿcheっぽいフィーリングを持った正統派メタルソングで中々カッコイイ。
ここまではキャッチーながらも、若干渋いというか不穏な雰囲気を醸し出す。

そこに登場する#4“Hold on to Your Dream”が気持ちいい。
典型的なストラトのパワーメタルソングで、希望に溢れるメロディと共に夢を掴めと歌う。
それまでの張り詰めた空気を打ち破るかのようなカタルシスを、ここで味わうことが出来る。

#5“Magic Carpet Ride”は歌詞的にもサウンド的にもオリエンタルな雰囲気を表現している異色曲。
キーボードの使い方がこの雰囲気を作るミソとなっている。

6#“We Are the Future”は環境破壊への警鐘と共に歌われる、高揚感溢れるサビをもったパワーメタルソング。
やはりこういう曲を作らせるとティモ・トルキは上手い。

#7“Tears of Ice”は正に北欧と言った感じのバラード。
哀愁、儚い、と言った言葉がこの曲を表現するのに適切だろう。
ピアノとフルートが絡み合い、北欧の寒々しいサウンドスケープを構築している。
良い曲だ。

8曲目にはアルバム表題曲が登場。
プログレ的展開力で魅せる曲だ。
子供の頃は現実から逃避する場所を持っていたと語るこの曲は、聴き手のイマジネーションを刺激する。

ヘヴィなリフにより攻撃的な面を見せる#9“Reign of Terror”に続く#10“Thin Ice”は超不穏な雰囲気を持った異色曲。
不協和音と意味不明な歌詞が不気味な曲だ。
ティモ・トルキの気の狂ったようなハイトーンボイスが印象的である。

このアルバムの方向性を象徴している曲の一つだろう。
このアルバムにはこの曲のように、ティモ・トルキの内省世界に深く入り込んだようなイマジネーション溢れる楽曲が収録されている。

インスト小曲の#11“Atlantis”、ダークな雰囲気のミドルテンポ曲#12“Abyss”に続く#13“Shattered”はハードなメタルナンバーだ。
ネオクラシカル要素が多少入っている間奏がハイライトか。

アルバムは平和のメッセージが希望に溢れるメロディと共に歌われるミドルテンポ曲#14“Wings of Tomorrow”で幕を閉じる。
長いアルバムのラストに相応しい曲である。
イントロの時点で既に高揚感がある。
ちなみにこの曲はシングルカットされている。

総評

まだバンドとしてのマジックは起きていないものの、ティモ・トルキが歌っている初期3枚の中では最高傑作と言えるだろう。
ティモの作曲能力が開花しつつあるアルバムだ。
曲数は多いが間延びすることはなく、充実した楽曲を収録している。
前作と違い、ミドルテンポの曲もちゃんと質が高いのが良い。
1stから考えると着実な進化を感じることが出来る。

そして#8や#10のように、ティモ・トルキの内省世界に入り込んだような陰鬱極まる楽曲も収録しており、現在のストラトでは味わえない世界観がここにはある。
これらの曲がアルバムの良いアクセントになっていて、聴き手を退屈させない。

このアルバムの後ティモ・トルキは自身のボーカルに限界を感じたのか、専任ボーカルを加入させることになる。
ということで、ティモ・トルキが歌っている時代のStratovariusの最後のアルバムである。
Stratovariusの初期に興味がある人は、まずこのアルバムから手を出してみるのが良い。

ちなみに#15“Full Moon”は日本盤ボーナストラックとなっている。
怪しげな雰囲気は悪くないが楽曲としてはイマイチで、ボーナストラックなのも納得である。

点数

83点

コメント

タイトルとURLをコピーしました