Stratovarius – Stratovarius[オリジナルアルバム全レビューシリーズPart1-11]

  


1. Maniac Dance
2. Fight!!!
3. Just Carry On
4. Back to Madness
5. Gypsy in Me
6. Götterdämmerung (Zenith of Power)
7. The Land of Ice and Snow
8. Leave the Tribe
9. United


彼らの得意とすることを敢えて封印したような重苦しいアルバム

フィンランドのパワーメタルバンドStratovariusの11thアルバム。
ティモ・トルキが精神的に不安定な時期に録音されたアルバムのようで、それが影響してかジャケットのイメージ通り最近のストラトの明るい雰囲気は影を潜め、かなりダークなアルバムの仕上がりとなっている。
正直ストラトで最もやっちまった感のあるアルバムだ。

楽曲レビュー

シングルになった1曲目の“Maniac Dance”から明らかに今までと違うことが分かる。
ダンサブルで機械的なリフを特徴とする異色ナンバーで、歌メロも気怠い感じでメロディアスさはあまりない。
悪い曲ではないのだが別にストラトがやらなくてもいいのでは?という気がする。

アップテンポだがこれまでと違いメロディアスではないロック色の強いナンバー#2“Fight!!!”に続く#3“Just Carry On”は、まだこれまでのストラトっぽいパワーメタルナンバー。
アニメソングのようなイントロ、臭いメロディとこのアルバムではお気に入りのナンバー。
シンプルで前向きな歌詞はいかにもティモ・コティペルトらしい。
しかしこの曲でもコティペルトは中音域で歌っていて、彼の特徴的なハイトーンは見られない。

#4“Back to Madness”はダークなミドルテンポナンバー。
途中ゲストがオペラで歌うパートがあり、そこではかなり怪しい雰囲気を醸し出す。
最後には意味深な男性の語りが入っている。

#5“Gypsy in Me”はメタリックなリフから始まるこのアルバムではらしい曲。
しかしやはり地味だ。

#6“Götterdämmerung (Zenith of Power)”もこのアルバムを象徴するようなダークなミドルテンポナンバー。
間奏のテンポが上がる部分は多少高揚感を得られる。
ピコピコしたアレンジのキーボードが無機質な印象を強めている。

#7“The Land of Ice and Snow”はフィンランド人としての誇りが感じられるバラード。
雪と氷に包まれた母国に思いを馳せる歌詞が心に染みる。
曲調も北欧らしい哀愁に包まれていて、目を閉じるとフィンランドの雪景色が目に浮かぶようだ。

メロディアスだが地味なミドルテンポ曲#8“Leave the Tribe”に続くラストの#9“United”は勇壮なサビをもったミドルテンポ曲。
サビがかなりキャッチーで、このアルバムでは好きな曲。
希望的な雰囲気でアルバムを聴き終えることが出来、この曲のおかげでアルバムの印象はそんなに悪くない。
しかし冷静にアルバムを振り返ってみると、かなり良い曲の少ないアルバムだ。

総評

ストラトで最も楽曲が弱いアルバムかもしれない。
いい曲もないことはないが、全体としてはかなり微妙なアルバムだ。
アルバムの大半が地味なミドルテンポ曲で占められている。
ストラトの得意とする疾走パワーメタルチューンが入っていないという異色作と言える。

そしてストラトサウンドのトレードマークである華のあるイェンスのプレイも、強力なヨルグのダブルベースドラムも、コティペルトのハイトーンボイスもここにはない。
ストラトの良い所をわざと消したようなアルバムで、挑戦したのかもしれないが結果は微妙だ。
疾走チューンがなくても俺達はやれるということを証明したかったのだろうか。

そんな中コティペルトの歌唱は頑張っていて、中音域でも聴かせることが出来ることを証明している。
結局地力のあるバンドなので聴けるアルバムに仕上がっていることは間違いない。
ティモ・トルキの作曲が絶不調の中、なんとか聴けるアルバムに仕上げた、そんな印象だ。
ちなみにティモ・トルキ自身もこのアルバムの出来には納得していないらしい。

点数

79点

お気に入り曲

Just Carry On、United

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