Stratovarius – Polaris[オリジナルアルバム全レビューシリーズPart1-12]

  


1. Deep Unknown
2. Falling Star
3. King of Nothing
4. Blind
5. Winter Skies
6. Forever Is Today
7. Higher We Go
8. Somehow Precious
9. Emancipation Suite Part I: Dusk
10. Emancipation Suite Part II: Dawn
11. When Mountains Fall


まだ発展途上感はあるものの新鮮なサウンドを聴かせる起死回生のアルバム

美麗なジャケットが印象的なフィンランドのパワーメタルバンドStratovariusの12thアルバム。
長年在籍していたティモ・トルキとヤリ・カイヌライネンが脱退し、後任にティモ・コティペルトのソロプロジェクトのベーシストであるラウリ・ポラー、そのラウリの知人であるギタリストのマティアス・クピアイネンが加入しての初のアルバム。
Stratovariusの殆どの曲を作曲していたメインソングラーターのティモ・トルキ脱退で解散かと思われていたが、残りのメンバーが結束し、新メンバーを入れて起死回生を狙い新たなアルバムを作り上げてきた。

トルキを失ってもStratovariusらしさのあるサウンドは保てるのかという疑問があったが、ここで聴くことが出来る音楽は驚くべき程らしさのあるサウンドである。
トルキを失ってもこのような音楽を作れたことは称賛されるべきだろう。
そしてワンマンバンドではなくなったバンドの演奏からは、若いメンバーを加入させたこともあり、漲る新鮮なパワーを感じることが出来る。

楽曲レビュー

まず新加入のマティアスのペンによるシングルになった#1“Deep Unknown”が素晴らしい。
ティモ・トルキ時代の臭みのあるメロディではなく、クールなメロディが新世代らしいプログレッシブパワーメタルソング。
プログレッシブな印象を抱かせるのはテクニカルなマティアスのギタープレイに依る所が大きい。

この新加入のマティアスのプレイは本当に素晴らしく、Stratovariusに新たにプログレッシブでテクニカルな要素を持ち込み、バンドサウンドを新鮮なものとしている。
この曲の彼の間奏でのギターソロは本当にカッコイイ。
Stratovarius新時代の幕開けを宣言する名曲である。

ちなみにマティアスはもう1曲書いていて、それが日本盤ボーナストラックとして収録されている#4“Second Sight”。
こちらも何故ボートラ扱いなのか分からない、マティアスらしいクールなメロディによる佳曲。
キーボードのメロディリフがカッコイイ。

新加入のポーラは5曲書いている。
その内の1曲のティモ・トルキ時代の陽性のパワーメタルソングを彷彿とさせる#7“Forever Is Today”も素晴らしい。
流麗で希望に満ちたメロディに元気が湧いてくる曲だ。

ネオクラ的要素も入っているし、これは正にストラトサウンドである。
この曲はかなりティモ・トルキの楽曲を意識している感がある。
ティモ・トルキ不在でもこのようならしい曲を作れることに驚きである。

もう一つポーラの書いた曲で素晴らしいのがラストを飾るバラード#12“When Mountains Fall”。
ストリングスとアコースティックギターによるバラードで、心温まるメロディとシンプルで心に染みる歌詞が素晴らしい。

この通り、新加入の2人が頑張っているアルバムだ。

ベテラン、イェンス・ヨハンソンは3曲提供している。
彼の曲からは特にこれまでのストラトサウンドを意識していることが窺える。

#3“King of Nothing”は重厚なミドルテンポでトルキっぽいし、寒々しい北欧をイメージさせる歌詞のバラードナンバー#6“Winter Skies”もトルキっぽい。
#6“Winter Skies”は間奏のピアノによるパートが美しい佳曲。
#5“Blind”はネオクラシカルパワーメタルナンバーで、歌メロは弱いがサビの明るさはティモ・トルキ時代のStratovariusらしい。

ティモ・コティペルトも2曲書いている。
その内の1曲#8“Higher We Go”は彼のシンプルな性格が出ているストレートなパワーメタルチューン。
コティペルトは生き生きと歌っていて、ライブ映えしそうな佳曲だ。

総評

ヨルグ以外の全員で楽曲を持ち寄って作ったアルバムで、ティモ・トルキ不在でもストラトサウンドは作れるということをここに証明している。
トルキが抜けたことでメロディに臭みがなくなり淡泊になったが、クールなメロディとプログレッシブ要素による新しいストラトサウンドは新時代の到来を感じさせる。
全員で団結してファンの納得するストラトサウンドを構築しようとした感が強く(イェンスの曲が特に)、結果は確かにストラトサウンドだが新鮮な部分も多く、バンドの今後の可能性を感じさせるアルバムとなっている。

全体としては手探り感が強くつまらない曲が多いものの、所々に光る楽曲が配置されているのだ。
このアルバムを新鮮なものとしているのはマティアスのセンスに依る所が大きい(彼はセンスが良すぎる)。
彼のテクニカルでプログレッシブなプレイがバンドに新たな息吹をもたらしている。

既述した通りつまらない曲も多く、トータルで見て引き締まっていないアルバムでもある。
コティペルとイェンスはたいして曲作りの才能がない気がする。
しかしティモ・トルキ不在の中ストラトらしいサウンドを作り上げたことは驚くべきことで、賞賛に値する。
今後の展望に期待を感じさせる、希望に満ちたアルバムである。

点数

83点

お気に入り曲

Deep Unknown、Forever Is Today、When Mountains Fall

コメント

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