Primal Fearの新作「Metal Commando」レビュー

  


1. “I Am Alive”
2. “Along Came the Devil”
3. “Halo”
4. “Hear Me Calling”
5. “The Lost and the Forgotten”
6. “My Name Is Fear”
7. “I Will Be Gone”
8. “Raise Your Fists”
9. “Howl of the Banshee”
10. “Afterlife”
11. “Infinity”


硬派な正統派メタルとメロディアスさのバランス感覚が素晴らしい傑作

元Gamma Rayのラルフ・シーパースとSinnerのマット・シナーらによる、ドイツの直球クラシックメタルバンドの13枚目のアルバム。
毎回高品質なヘヴィメタルを聴かせてくれてファンを決して裏切ることのないこのバンドだが、新作はどうなっているのか。

楽曲レビュー

#1“I Am Alive”はミュージックビデオにもなった名刺代わり1曲。
パワフルな演奏、ラルフのハイトーンボイスとPrimal Fearの魅力がこの1曲に詰まっている。
サビがメロディアスでキャッチーなのがミソである。

#2“Along Came the Devil”はラルフの金切り声が印象的なJudas Priestライクなオールドスクールなタイプの曲。
若いバンドにはやれない渋さがありつつも現代的でもある。

#3“Halo”は大仰なイントロで始まる現代的なパワーメタルナンバー。
こういう曲をベテランがやることに重みを感じる。
歌メロ自体が勇壮的でカッコいいし、ギターソロも煽情的でスキのない曲だ。
こういう曲を入れることは過去のバンドではないということの意思表明でもあるし、アルバムの流れにもドラマが生まれるというものだ。

#4“Hear Me Calling”はメロウな一面を見せた曲。
哀愁漂うサビを持ったメロハー的な感触のある曲だが、しっかりヘヴィメタルとして成立させている。
このアルバムでの彼らのメロディの充実ぶりは凄い。
この曲は3rdシングルで、ミュージックビデオにもなった。

#7“I Will Be Gone”は異色のアコースティックバラードだが、歌のキーは相変わらず高い高い。
何処か70年代の香りのある曲で、良いメロディを持った佳曲である。

#9“Howl of the Banshee”はサビでいきなり明るい雰囲気になる同郷のEdguyっぽいパワーメタルナンバー。
本家Judas Priestがやらないこういう曲も出来る所がこのバンドの強みである。

ラストを飾る#11“Infinity”はメロディアスな大作ナンバー。
構成が良く出来ていて退屈な瞬間はなく、彼らの底力を見せつけている。
凝った展開だが個々のパートは聴きやすいので、あまり複雑な印象はない。
後半はストリングスを取り入れたドラマチックなパートも登場する。

総評

13枚目にしてここまで充実したアルバムを作り上げてきたことに正直驚いた。
ベテランのアレンジの妙を隠し味にした楽曲の充実ぶりが素晴らしい。
特に冒頭4曲は流れ的にも完璧である。

音楽性的にはクラシックメタルを基本としつつ、メロウな曲やメロパワ系の曲を織り交ぜていて、それらの楽曲がアルバムに起伏を生み出している。
個々の楽曲のキャラ立ちがバッチリなのだ。

そして正統派メタルバンドにありがちなメロディの弱さを克服しているのもこのバンドの強みで、メロディアスな場面はしっかりとメロディアスに聴かせてくれる。
ゴリゴリでヘヴィな硬派パートとメロディアスな場面の押し引きが絶妙で、音楽を分かっている人達の作った音楽がここにはある。

つまりヘヴィになりすぎたと思ったら突如メロディアスになる場面が多く、この瞬間にハッとさせられるのだ。
かと言ってメロディアス過ぎて軟弱になることはなく、あくまで硬派なヘヴィメタルを保っていて、このバランス感覚が素晴らしいのだ。

とにかく強力な作品であり、ベテランの凄みを見せつけている。
そしてラルフ・シーパースのハイトーンボイスは衰え知らずで、未だに超絶ハイトーンを披露して我々を楽しませてくれる。
ベテランの経験によるバランス感覚が絶妙なピュアメタルの傑作である。

点数

90点

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