1. …Of Silence
2. Weballergy
3. False News Travel Fast
4. The End of This Chapter
5. Black Sheep
6. Land of the Free
7. Last Drop Falls
8. San Sebastian (Revisited)
9. Sing in Silence
10. Revontulet
11. Tallulah
12. Wolf & Raven
13. The Power of One
ヘヴィメタルを聴いたことのない人にもおすすめ出来るアルバム
フィンランドのパワーメタルバンドSonata Arcticaの2ndアルバム。
1stアルバムをリリースした後、同郷のStratovarius、イタリアのRhapsodyと共にツアーをし知名度を高めた後にリリースされた、パワーメタルファン待望のアルバム。
新たにベーシストのマルコ・パーシコスキ、キーボーディストのミッコ・ハルキンが参加している。
北欧メタルの名盤との呼び声も高いこのアルバムを振り返ってみたい。
楽曲レビュー
このアルバムには、彼らの代表曲とも言われる楽曲がいくつも収録されている。
まずその一つがインストの小曲#1“…Of Silence”と繋がっている、実質オープニング曲である#2“Weballergy”だろう。
1stのイメージからすると随分明るい雰囲気に驚くが、これがキャッチーなサビを持った秀逸なパワーメタルナンバー。
この爽快感のあるサビは凄い。
とにかく分かりやすいメロディが印象的なナンバーで、意外と彼らの曲の中では珍しいタイプ。
Helloween直系という感じがするが、彼らはHelloweenにはあまり影響を受けていないらしい。
歌詞は前作の1曲目だったBlank Fileの続編らしく、インターネット中毒について。
以前はライブで良く演奏されていた、ネオクラシカル色の強い人気疾走パワーメタルナンバー#5“Black Sheep”も代表曲の一つと言える。
これも分かりやすいメロディで構築されていて、とっつきやすさが凄い。
イントロのギターとキーボードによるハモりも印象的だし、間奏で繰り広げられる同じくギターとキーボードによるソロバトルは、この曲のハイライトだろう。
8曲目のSan Sebastian (Revisited)は、彼らの曲の中で最も有名な曲の一つかもしれない。
実はトニーが初めて書いたパワーメタルソングらしいが、訳あって1stには収録しなかったらしい。
何度も繰り返される印象的なサビを中心とした叙情的なメロディ、ダブルベースドラムによる疾走感、ネオクラシカルなギターソロとキーボードソロ、完璧である。
そしてトニー・カッコのウエットな歌声が、バンドの繊細な精神性を主張している。
パワーメタルの大名曲として有名なのも、納得の出来である。
実は歌詞は初恋についてで、主人公はかつて恋をした完璧な女性を忘れられずにいる、といった内容。
恋愛の歌詞が多いのも彼らの特徴だ。
#11“Tallulah”も彼らの曲で最も有名な曲の一つ。
パワーメタルバンドらしからぬ、ちょっとオシャレな雰囲気すらある名バラード。
シンプルな恋愛の歌詞が心に染みる。
Cメロ~間奏~Dメロの流れが完璧で、個人的にハイライトだと思う。
彼らのライブでこの曲が演奏されているのをYouTubeなどで見ると、イントロのピアノで女子の絶叫が巻き起こるので、どれだけ人気があるかが分かる。
静寂を切り裂くように始まる#12“Wolf & Raven”も、大人気の超高速パワーメタルチューン。
基本的に初期の彼らの楽曲はスピードチューンばかりだが、この曲のスピードは常軌を逸している。
トニーの歌唱もやけにワイルドで、普段と様子が違う。
とにかくクレイジーな速さが印象的な曲だが、相変わらずメロディはしっかりしているから凄い。
ネオクラ要素も入っていて、とにかく曲全体のメロディが流麗に流れていくのはいつものソナタ節。
これは名曲だ。
歌詞は自分の中の悪について歌ったものらしい。
この5曲がこのアルバムで特に有名だと思うが、他にもフックのある良い曲がたくさん入っていて、捨て曲のようなものは一切ない。
バラードはTallulahの他にも2曲収録されている。
その一つはストーカー男をテーマにした#4“The End of This Chapter”。
このストーカー男をテーマにしたストーリーはカレブサーガとして、後のアルバムの楽曲でもストーリーが語られることとなる。
そのカレブサーガの、最初のストーリーを語っているのがこの曲である。
最終的にストーカー男は彼女を見つけて、彼女の寝室に忍び込む、といった内容。
ダークなストーリーと物悲しいメロディがフィットした、素晴らしいバラードに仕上がっている。
もう一つのバラードは#7“Last Drop Falls”。
今度は女性のほうが酷く、それでも彼女を拒めない男性のストーリーとなっている。
これもメロディが本当に美しく、トニー・カッコのメロディーの引き出しは無尽蔵なのか、と思わされる。
ラストに収録されている人種差別をテーマにした大作ナンバー、#13“The Power of One”も素晴らしい。
全体的に寂しげな雰囲気を持ちつつも色々と展開する、プログレッシブなパワーメタルナンバーだ。
総評
前作と路線的には概ね同じで、前作でファンになった人達が十分に満足出来る、充実した内容に仕上がっている。
個人的には前作のほうが好きだが、今作は特定の楽曲のクオリティがずば抜けている。
Weballergy、San Sebastian、Tallulah、Wolf & Ravenの4曲は今でもパワーメタル史に刻まれた名曲だと筆者は思っている(Tallulahはパワーメタルとは言えないが)。
全体のクオリティとしては前作に軍配が上がるが、上記の4曲に関しては突出している、という印象だ。
勿論超高次元のレベルでの話なので、このアルバムとて捨て曲は一つもないのは先程も言った通り。
前作のクオリティが異常すぎただけなのである。
トニー・カッコの歌唱に関しては、前作では高音が危なっかしい部分もあったが、今作では安定している。
ツアーをして歌いまくった成果が出ているのかもしれない。
メロディックパワーメタルアルバムとして分かりやすいアルバムで、とにかく聴きやすい親しみやすさが特徴だ。
メタルにうるさいイメージを持っていて嫌いな人でも、このアルバムなら普通に聴けるのではないだろうか。
ヘヴィメタルを聴いたことのない人にもおすすめ出来るアルバムである。
母国フィンランドのチャートで3位を記録し、このアルバムでパワーメタルバンドとしての地位を確立することとなった。
彼らの若さ漲る演奏と、才能の煌めきを感じることの出来る、貴重な瞬間を捉えたアルバムであり、パワーメタルのマスターピースであることに異論の余地はない。
ちなみに#3“False News Travel Fast”に、同郷の先輩Stratovariusのティモ・コティペルト(Vo)がゲスト参加している。
歌っているのはラストのほんの一瞬だけだが。
点数
95点
お気に入り曲
すべて良いが特にWeballergy、San Sebastian、Tallulah、Wolf & Raven。
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