[レビュー]Insania – V (Praeparatus Supervivet)[新作]

  


2021年11月12日発売


1. Praeparatus Supervivet
2. Solur
3. Prometheus Rise
4. Moonlight Shadows
5. My Revelation
6. We Will Rise Again
7. Like A Rising Star
8. Blood, Tears And Agony
9. Entering Paradise
10. Power Of The Dragonborn
11. The Last Hymn To Life


ソロパートに長い時間を設け、劇的なメロディを次々と繰り出すスタイルは今作でも変わらず

スウェーデンのパワーメタルバンドInsaniaの14年ぶりとなる復活作が登場した。
その名もV (Praeparatus Supervivet)で、イタリアの大手Frontiers Recordsと契約しての再スタートとなる。
初期のギタリストが戻って来ていて、ツインギター体制となっているのも注目すべき点だ。

2000年代初頭、パワーメタル(当時日本ではメロスピと呼ばれていた)がちょっとしたブームになっていた時に、そこそこ注目されていたバンドの一つである。

パワーメタルブームの終焉の後に生き残れたバンドは本当に実力のあったバンドだけで、そこまで個性もなかったこのバンドが埋もれてしまったのは必然だったのかもしれないが、彼らの紡ぐメロディに魅力があったことは確かだったと思う。

HelloweenやStratovariusからの影響が大きく、時にはメロディがそのまま拝借されているのは苦笑を禁じ得なかったが、好きなものを隠さないその正直さは微笑ましいものがあった。
そんな愛すべきクサメロスピバンドInsaniaの復活作はどうなっているのか。

楽曲レビュー

1曲目“Praeparatus Supervivet”からかなり音が良くなっていることに驚く。
そりゃあ前作から14年も経っているのだから当たり前と言えば当たり前だが。
Frontiers Recordsという大手と契約したことで、レコーディングにしっかりとお金をかけられたというのもあるのかもしれない。

肝心の内容だが、Insania帰還を高らかに告げるに相応しい爽快なパワーメタルチューンで、佳曲である。
サビの飛翔感はまさに2000年代初頭を思い起こさせるメロスピという感じで、懐かしさを感じさせる。

音質以外何も変わっていないあの頃のままのサウンドだが素晴らしい。
ギターソロではStratovariusの名曲The Hands of Timeのサビにそっくりのメロディが登場。
本当に彼らはStratovariusが好きなんだなと微笑ましくなり許してしまう。

ミュージックビデオも作られていて、恐らく彼らとしては初のミュージックビデオだと思われる。

#2“Solur”はイントロのキーボードのアレンジがモダンさを感じさせるが、歌メロは哀愁系。
哀愁の歌メロとヘヴィなギターリフのコンビネーションが冴える楽曲となっている。

間奏の長いソロは正にInsania節で、途中StratovariusのBlack Diamondのサビのフレーズも登場。
またStratovariusかよという感じだがそこはご愛嬌。

#3“Prometheus Rise”はミドルテンポでどっしりとした荘厳さのある、Insaniaとしては珍しいタイプの曲。
打ち込み丸出しだがクワイアもたっぷりと使われている。
ミドルテンポでもメロディの良さは変わらないのがミソ。

#4“Moonlight Shadows”はクラシカルなフレーズで始まり、サビではキャッチーなフレーズを伴って疾走する典型的なInsaniaの曲。
リフはIron Maidenからの影響を感じさせる。
最後のシンフォニックで壮大に、希望を感じさせる雰囲気で幕を閉じる部分はパワーメタルの王道だがカッコいい。


#5“My Revelation”はイントロのツインギターのフレーズなど、正統派色(Iron Maiden色)を感じさせる曲。
全体的に歌メロも勇壮な感じで、かなりカッコいい。
ギターソロでもIron Maidenライクな勇壮なメロディを奏でるツインギターが炸裂する。

かなり長いソロパートがこの曲でも設けられていて、これが彼らのサウンドのトレードマークとなっている。
クラシックからの影響も勿論ある曲だ。

#6“We Will Rise Again”は初っ端からクサメロで疾走を開始。
その後も次々とクサメロが繰り出されるという典型的なInsaniaの曲。
「音楽は死なない、我々は再び立ち上がる」というメッセージは14年ぶりに復活した彼らの境遇に相応しい。

#7“Like A Rising Star”はピアノによる叙情的なフレーズで始まり、サビではHelloween系の飛翔感のあるサビが展開される曲。
間奏ではミドルテンポになり、曲に変化をつけている。

ドラマティックなソロはこの曲の聴き所の一つである。
メインリフとなっているメロディがあるのだが、それがかなりのクサメロで癖になる。

#8“Blood, Tears And Agony”はイントロのキーボードのスペイシーなフレーズがStratovariusっぽいナンバー。
これはどちらかというとクサメロというよりは、クールなメロディで聴かせるタイプの曲。
間奏ではクラシカルなフレーズが登場する。

#9“Entering Paradise”はイントロとサビのメロディがHelloweenのMarch of Timeを彷彿とさせる曲。
そのせいかジャーマン感の強い曲となっている。
この歌いやすいメロディはInsaniaらしくもあるのだが。

#10“Power Of The Dragonborn”は勇壮なサビを伴いじっくりと聴かせるナンバーで、Insaniaとしては珍しい男声のコーラスが登場する。

#11“The Last Hymn To Life”は正統派なリフで始まるが、サビになると雰囲気が明るくなる。
このサビは日本人が大好きと言われているカノン進行である。
ソロではクラシックの名曲のフレーズが大々的に取り入れられていて、ありがちだがやはりいいものはいい。

壮大でシンフォニックなキーボードも曲を上手く演出している。
「人生の最後の賛美歌」という大袈裟なタイトルからして、勝負曲なのかもしれない。

総評

拝借フレーズが今作でも多いのが気になるは気になるが、そのクオリティは中々に高く、全体として以前とほぼほぼ変わらぬピュアなパワーメタルを追求している。
2000年代初頭のメロスピ/パワーメタルブームを彷彿とさせる、クサメロの嵐が次々と押し寄せてくる濃い作品である。

#3“Prometheus Rise”以外すべてスピードチューンで固めているのが潔い。

ソロパートに長い時間を設け、劇的なメロディを次々と繰り出すスタイルは今作でも変わらず、相変わらず魅力的だ。
ツインギターになったことにより、そのスタイルが更に存分に活かされているのも注目すべき点だ。

14年ぶりということもありアイディアたっぷりといった感じで、楽曲にエネルギーが満ち溢れている。
思っていたより作曲能力の高いバンドだったんだなと思い知らされた。

ボーカルのオラ・ハレーンの歌声はより力強くなっていて、バンドとしての説得力も増している。

音質の向上のせいかもしれないが、心なしか以前よりセンスが良くなっている感もある。
#2“Solur”では以前ではあり得なかったモダンなキーボードアレンジが施されていたり、ミドルテンポで荘厳な雰囲気の#3“Prometheus Rise”など、新しい要素もあるにはある。

これがB級メタルに入るか入らないかと言われたら、多分B級メタルに入るのだろう。
何処かで聴いたようなメロディ満載でも、結果聴いていて気持ちいいのだからいいではないか。
これがB級なら、最高峰のB級メタルアルバムと言えるだろう。

正直アルバムを通しで聴くと食傷気味になるが、1曲1曲のクオリティは高い。

Insaniaのポテンシャルを最大限に出し尽くした作品という感じもしていて、今後これ以上のものが出て来る気がしないのがネックか。
Insaniaとして作れる最高クオリティの作品がこのアルバムな気がしている。
彼らとしては恐らくやり切った、という感じなのではないだろうか。

点数

85点

お気に入り曲

Praeparatus Supervivet、Solur、Moonlight Shadows、My Revelation、The Last Hymn To Life

コメント

タイトルとURLをコピーしました