ドイツの重鎮パワーメタルバンドHelloweenのニューアルバム、その名も「Helloween」が本日発売となった。
ヘヴィメタル界にとって超注目作であり(とりわけ日本では)このサイトでもレビューしようと思うが、その前にこの機会にHelloweenについての想いを語ろうと思う。
Helloweenについて筆者がどう思ってるかと言えば、それはもう偉大なバンドの一つであることは間違いないと思っている。
Helloweenの初期の作品がメロディックパワーメタルの基礎を作ったことは間違いなく、HelloweenがいなかったらSonata ArcticaもStratovariusもDragonForceも存在しなかっただろう。
とりわけ1987年と1988年に発表したキーパーシリーズ(Keeper of the Seven Keys: Part IとKeeper of the Seven Keys: Part II)の出来は凄まじく、今もパワーメタルの名盤として燦然と光輝いている。
Keeper of the Seven Keys: Part Iの前に出したフルアルバムWalls of Jerichoは、スラッシーなギターとカイ・ハンセン(ギター&ボーカル)の荒々しい歌唱がなんとも言えないB級感を醸し出しつつも、魅力的な楽曲が光るアルバムだった。
ドイツの歌謡曲シュラガーに影響を受けたような哀愁漂う旋律はこの頃から見られ、これがこのバンドの個性を強烈に主張していた。
Judas PriestやIron Maidenとは明らかに違う、新しい音楽をこの頃から創造していた。
そして専任シンガー、マイケル・キスクの加入である。
ジェフ・テイトを彷彿とさせる、伸びやかでオペラチックなハイトーンが素晴らしいキスクの加入により、Helloweenの楽曲の魅力は最大限に引き出された。
楽曲も洗練され始め、Keeper of the Seven Keys: Part IでHelloweenは彼らのパワーメタルのスタイルを確立させた。
その次の年に出したKeeper of the Seven Keys: Part IIも素晴らしい出来で、このアルバムではもう一人のギタリスト、マイケル・ヴァイカートの活躍が目立っている。
Eagle Fly Free、Dr. Stein、Rise and Fallなどのキャッチーな曲を作曲した。
前作のカイ・ハンセンが作った大作Halloweenに対抗するかのように、Keeper of the Seven Keysという13分の大作も手掛けた。
構築美に満ち溢れた名曲である。
カイ・ハンセンもI Want OutとMarch of Timeを手掛け、前者はバンドの代表曲として定着している。
凄まじい出来であるこの2作を発表したことにより、Helloweenは伝説のバンドとなった。
しかしその後カイ・ハンセンが脱退し、Helloweenは迷走する。
バンドのメンバーが一人変わっただけでこうも音楽性が変わるのか、と思わされた。
その後マイケル・キスクが解雇されアンディ・デリス(ボーカル)を得たことによりHelloweenは復活するが、今でもキーパーシリーズが彼らのベストだと言う声も多かった。
そして2016年に突如発表されたのがマイケル・キスクとカイ・ハンセンがHelloweenのツアーに参加するというニュース。
これには驚いた。
まさかマイケル・ヴァイカートとカイ・ハンセンのツインギターがステージでまた見られる日が来るとは。(サシャも入れてトリプルギターだが)
そしてそのツアーは大成功し、ツアーだけに留まらずニューアルバムも作ることになり、遂にここに届けられたのが新作「Helloween」である。
天才マイケル・ヴァイカートとカイ・ハンセン、伝説のシンガーのマイケル・キスクの共演。
これ程楽しみにしていたアルバムも久しぶりだった。
彼らはパワーメタルを発明したのでパワーメタルバンドと見做されているが、実はその音楽性の懐は深い。
一人のリーダーが引っ張っていくワンマンバンドではなく、殆どのメンバーが作曲に貢献しているバンドだということに起因していると思う。
アンディ・デリスの作る曲は基本的にハードロックソングでパワーメタルでないが、Helloweenとして演奏されるとそれはたちまちHelloweenの曲になる。
Helloweenの楽曲を聴くと、やはりジャンルのパイオニアは才能が違うと思わされる。
数々のハロウィンフォロワーが生まれ、大物になるバンドも数多く出てきたが、ハロウィンの表面だけを真似たようなバンドも多かった。
勿論それらのバンドには優れたものも多かったが、Helloweenからは往年のロックからの影響が感じられ、本物のロック魂を継承しているバンドなのだ。
ただツーバスドラムで疾走し、キャッチーなメロディを導入すればハロウィンになるわけではないのである。
このHelloweenのロックンロール魂まで継承しているパワーメタルバンドというのは思いつかず、これがHelloweenを特別な存在にしていると思っている。
あくまでHelloweenはロックバンドなのである。
マイケル・ヴァイカートとカイハンセンとマイケルキスクが在籍していた時代は、キーパーシリーズのみだということも忘れてはならない。
ハロウィンの歴史の殆どを引っ張ってきたのは、カイハンセンとマイケルキスクではないのだ。
例えばアンディデリスはもう既に27年間バンドに在籍していて、彼の貢献なしには今のハロウィンはありえなかった。
黄金時代のメンバーが帰ってきたことでこの新作の注目が高いのは分かるが、是非カイ・ハンセンとマイケル・キスク脱退後のハロウィンにも触れて欲しいと思う。
彼らが今も現役でやり続けることが出来る理由がそこにあり、新作ハロウィンもその基盤の上に成り立っている作品であることは間違いない。
キーパーシリーズだけではなく、Helloweenというバンドの歴史そのものが伝説なのである。
パワーメタルの歴史的名盤との呼び声高いKeeper of the Seven Keys: Part IとKeeper of the Seven Keys: Part II↓
アンディ・デリス加入後に発表した、起死回生のアルバムMaster of the Rings↓
マイケル・キスクとカイ・ハンセンが再び参加したことで話題のニューアルバムHelloween。
完全盤は2枚組で本編から漏れた曲や、2017年に発表された新曲Pumpkins Unitedが収録されている。
↓筆者は勿論こっちを購入した。
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